作業療法士の国家試験に合格し、作業療法士として就職した人が、就職先を退職することがあります。実際にはどれぐらいの割合で離職をしているのでしょうか?その背景にはどんなことがあるのでしょうか?現役作業療法士が、自らの経験も含めお話しします。

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作業療法士の離職率はどのぐらい?

まずは、作業療法士の離職率を具体的に見ていくことにしましょう。

作業療法士の離職率

作業療法士がどれくらい離職するか?実は、60%前後になっています。

意外と高いと思われませんか?これから作業療法士として頑張ろうと思っている皆さん、びっくりされますよね。でも、心配しないでください。その理由やその後の状況についてはこの後でお話しします。

リハビリ職全体

作業療法士以外にも、国家資格を持つリハビリ職種として理学療法士や言語聴覚士などの職種がありますが、他職種も作業療法士と同じぐらいの離職率となっているのでしょうか?

職種によってそれぞれですが、理学療法士は、作業療法士よりも離職率は低めです。言語聴覚士は作業療法士と同じくらいです。職種によって多少差があるのは、職種ごとの特徴が関係していると考えられます。

職場ごとで離職率は変わる?

作業療法士が勤務する職場には、様々な種類があります。

勤務先として多いのは、病院(大規模・小規模)、高齢者施設などがあります。その他にも小児関連のリハビリ施設、訪問リハステーション、公務員として勤務することもあります。

勤務先ごとに離職率が大きく増減するというということはありません。

作業療法士が離職を考える要因

作業療法士が離職しようと思うのは、どういう理由からなのでしょうか?なぜ、離職率がこれほど高い数値になるのでしょうか?

生活の変化

私も経験しましが、作業療法士の離職率が上がる原因の1位は実はこれなのです。

作業療法士は、男女比が4:6~5:5となっており、女性の割合の方がやや多くなっているのです。女性の作業療法士の多くは、結婚、出産を機に離職します。育休の制度が整っている大きめの病院に勤務する人の中には産休・育休を取り、育休が終わってから復帰することもありますが、私の周囲の作業療法士の多くは、結婚や出産を機に一度離職し、再度別の施設での勤務をしています。

大きな施設の場合、託児所が併設された勤務先もあります。女性スタッフにとっては安心して子供を任せることができる託児所があれば、離職率はもっと減るのではないか、と私個人的には思います。

理学療法士や言語療法士の離職率に関してもこれと同じ理由で離職率に差が出ています。理学療法士は男女の割合が、男性の方が多いため、離職率は若干下がります。言語聴覚士は男女比が作業療法士とあまり変わらないため、離職率にも差が見られません。

労働条件

それ以外の離職を考える理由として多いのは、労働条件が挙げられます。

勤務時間が自分の生活スタイルに合っていない、残業時間が多すぎる、などで離職を考える人がいます。また、給与面や待遇も勤務を継続するうえで重要な要素となります。

職場環境

勤務先の施設の快適さ、通勤の利便性などの職場環境も離職を考えるきっかけとなることがあります。自分が目指す作業療法を行うにあたり、職場環境があまりにふさわしくない環境であれば離職を考えることがあります。

また、勤務先での人間関係も非常に重要な要素です。上司との関係、他職種との関係、患者さんとの関係においても、続けていくことが困難な状況があれば、それが改善されないという場合は離職も必要な選択になります。

精神面、身体面

作業療法士自身が、患者さんに対して作業療法を行うことが困難なほど精神的、または身体的に負担がかかっている、その場合も離職の要因となります。

状況が改善するような対策を取ることができればよいですが、そうでない場合には、作業療法士本人も患者さんも大きなリスクを伴うことになるので、無理してそこで勤務を継続することはしない方がよいと思います。

将来性

勤務している職場での作業療法士自身の将来性に不安が出ることもあります。作業療法士として、さらに上または別の分野を目指すために、現在の職場を離職し転職する人もいます。

また、作業療法士以外の職種を目指す、という人も実際にいます。実は、私が勤務していた病院の上司も、今は医療とは関係ない仕事をしています。

作業療法士が離職したら

作業療法士は離職後、どのような進路を進むのでしょうか?

休職して復帰

女性に多い、結婚・出産に伴う離職後は、生活が落ち着いた後、再び作業療法士として復帰します。私もその一人ですが、パートとして、希望の条件に合う勤務先を見つけ、復帰することが多いです。もちろん、正社員として復帰する人もいます。

それ以外にも、病気や様々な事情により一時的に離職後も、作業療法士として勤務できる職場を探して復帰することは比較的容易にできます。

作業療法士として転職

作業療法士として、さらに上の勤務条件やキャリアアップを目指して新たな勤務先に転勤する人も多いです。また、高齢者の施設で勤務していたけれど、整形外科領域の作業療法をやってみたい、など、作業療法において別の分野への挑戦をする人もあります。

さらには、自ら訪問リハステーションを立ち上げる、という人もいます。

実は、作業療法士は現在も需要が高く、希望の転職先を探すことは難しくない職業です。転職をサポートしてくれるリハ職専門の仲介業者もあるぐらいで、私もそこに登録してパート先を見つけることができました。

違う職種への転職

実際に作業療法士と働いてみてから、作業療法士以外の職種で働いてみたい、と思う人も少なからずいます。

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早期の離職を避けるために

離職が多い職種とは言ってもやはり、次々離職してしまうのは就職先にも関わっている患者さんにも迷惑をかけてしまうことになります。できるだけ早期での離職を避けるためにできることはあるのでしょうか?

職場見学

まずは、職場の雰囲気を知ってから就職する、というのが大切です。

勤務条件が合う施設が見つかれば、可能であれば面接の前に一度、職場の見学をさせてもらいましょう。見学することで、職場の様子はだいたいつかめます。合う、合わないは第一印象でわかることが多いです。また、見学に行くことで、施設側もどんな人なのかを判断する材料ができるので、お互いにプラスになります。

見学をさせてもらえない施設の場合は、地域との交流などイベントがないかチェックしてして、それに参加する、という方法もあります。

労働条件や環境を念入りに確認する

就職の前には必ず面接があるので、面接の時点で気になることはすべて確認するようにしましょう。

作業療法士の面接は、多くの場合、面接官の方と条件面なども含めしっかりお話しすることができます。お互いに良好な関係での就職を望むので、あいまいにせず、思っていることは話すようにすることで、両者の希望に近い形での就職が可能になると思います。

ホームページをチェック

最近は、多くの施設にホームページがあり、詳細を知ることができます。時には施設利用者の口コミが掲載されていたり、スタッフブログが載っているものもあります。それらはチェックすることで、スタッフの働いている様子や施設の雰囲気などを客観的に知ることができます。

知っている人に聞く

先輩や知人、学校の先生からも、どのような施設なのか聞くことができれば聞くようにしましょう。先入観を持つのも善し悪しではありますが、判断材料の一つにはなります。

自分が職場の風土に合わせて努力する

就職までに、あの手この手で情報を集めても、やはり働いてみないとわからないことの方が多いものです。こんなはずじゃなかった、と思うこともあるかもしれませんが、慣れが必要なこともあります。少し努力する、見方を変えてみることで変わることもあります。簡単に放り出さずに、長い目で見て努力できる部分はしましょう。

相談相手をみつける

どうしても合わない職場はあります。ただ、それを判断するときに、一人で判断するのは難しいものです。同じ職場内の人でも、学生の時の友達でも、家族でも学校の先生でもかまいません。相談相手を見つけて、相談できる場所を作りましょう。

これから作業療法士を目指す方へ

現役作業療法士としてお伝えしたいのは、作業療法士はとってもやりがいのある仕事です。就職したら、その勤務先でのやりがいを見つけて頑張ってほしいと思います。

ただし、作業療法士は比較的離職率と転職率の高い職種です。今働いている作業療法士も、それだけ自分に合った職場を探す幅がある職業であるということです。

さらに、これからまだまだ需要が伸びる職業でもあります。

一生続けることのできる職業であると、長い目で見ながら進んでいってほしいと思います。

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