理学療法士(作業療法士)を目指すにあたって、気になってくるのが離職率です。離職率は職業環境を知る上でチェックすべきと言われる項目です。調べた離職率が低ければホッとして、高ければ不安になることでしょう。

しかし理学療法士(作業療法士)の離職率は他の職業とは違った見方も必要となることをご存知でしょうか?

ここでは理学療法士(作業療法士)の離職率と、その捉え方をお教えします。「理学療法士(作業療法士)の離職率が気になる」、「理学療法士(作業療法士)として働きたい」という方は是非読んでみてください。

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理学療法士(作業療法士)の離職率はどのぐらい?

理学療法士(作業療法士)の離職率について調べた調査があります。一般的な離職率と比較しながら、みていきましょう。

理学療法士(作業療法士)の離職率

理学療法士協会が行った平成28年の調査によると、理学療法士の離職率は医療分野では10.2%、介護分野では18.8%とされています。

厚生労働省が行った平成27年の調査によると常用労働者の離職率は15%なので、理学療法士の離職率は医療分野では低く、介護分野では高いと言えます。

実際に理学療法士が現場で感じた離職率とは?

実際に私は理学療法士として病院に勤務していたのですが、そこでの離職率はかなり低かったです。17人の理学療法士が勤務する職場でしたが、私が在職していた6年間で離職したのは自分を含めてたった3人です。

一方で私の知人理学療法士が勤務していた病院の離職率は高いです。その職場では新卒理学療法士のほとんどが5年以内に離職しています。

調査では理学療法士の離職率は医療分野が低く介護分野では高めという結果ですが、実際に経験した現場や知人たちから聞いた話をもとに考えると、離職率は勤務先次第のように感じます。

理学療法士(作業療法士)が離職を考える理由

離職率は一般的にはその数値が注目され、それが高ければネガティブな職業・職場だと判断されます。しかし理学療法士(作業療法士)の場合は数値だけでなく、「離職を考える理由」について知ることが重要です。理由が分かれば、理学療法士(作業療法士)の離職率の見方が変わりますよ。

スキルアップ

理学療法士(作業療法士)としてのスキルアップを意識して離職する人は多いです。

たとえば急性期病院勤務であれば「回復期もみてみたい」という思いで離職をしたり、糖尿病理学療法といったある特定の疾患に興味を持っている理学療法士であれば「専門医がいる病院で知識を深めたい」という理由で離職するケースもあります。

理学療法士(作業療法士)の場合、勤務先によって担当する年齢や疾患が大きく異なるため、幅広い知識や視野を養っていくために転職は良い手段となります。

地元に戻る

地元に戻ることが離職理由になることも多いです。

理学療法士の場合、資格を取得するために地方から養成校のあるところへやってくるという人は多いです。しかしその人たちは資格を取得したからといって地元に戻って就職先を探すとは限りません。

養成校周囲にある病院や施設は基本的に技術水準が高く、研修会も頻回に行われています。卒業したての理学療法士にとっては地方の病院や施設より魅力的な就職先です。

そのため最初は養成校周囲で就職してスキルを身につけ、それから地元に戻って就職するというケースは少なくありません。

給与・待遇

給与・待遇のアップを目指して離職する人もいます。

理学療法士(作業療法士)の新卒者は最初の勤務先を選ぶポイントの1つにスキルアップを重視している人が少なくありません。卒業したての頃は患者さんをみるスキルはないので、これを重視することは大切なことです。

しかしスキルが身につけば、給与・待遇を求めるようになります。職場によって差があるので、現状に満足できなければより良い条件を求めて離職していきます。

労働時間

労働時間を理由に離職するケースもあります。実は理学療法士の労働時間は職場によって大きく異なります。勤務時間内に患者さんをみて、カルテを書き終えられるところもあれば、勤務時間ギリギリまで患者さんをみて、時間外にカルテを書くところもあります。

私が働いていた職場は出勤は8時で業務終了18時でしたが、知人理学療法士の職場では出勤8時で業務終了(勉強会、研究も含めます)23時でした。

知人のなかには労働時間短縮を求めて離職した人がいます。

人間関係

人間関係で離職をする人もいます。私の知人も上司と合わないことを理由に離職した人が居ました。

将来性

勤務先の将来性を感じないことを理由に離職する人もいます。

理学療法士(作業療法士)の場合は勤務先が倒産するとこはほとんどありませんが、経営状態が悪化して給料やボーナスが減るということはあります。求人が多い職業なので、悪化した状態が続けば他の経営状態が良い職場を探すようになります。

家庭との両立

女性であれば結婚・出産を機に離職をする人がいますが、実際に私がこの理由で離職をしています。

私の場合、子育てに専念をしたくて離職を選びました。しかし子どもが幼稚園や学校に行くようになれば徐々に理学療法士の仕事を再開しようと思っています。

一般的には一度離職をすると再就職が大変ですが、理学療法士の場合は求人が多く復職がしやすいので、「今だけ」という気持ちで安心して職を離れることができています。

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理学療法士(作業療法士)が離職したら

理学療法士(作業療法士)の離職はポジティブな側面が大いにありますが、普通は離職というと「その先どうなるの?」と不安になりますよね。では、実際に理学療法士(作業療法士)が離職した後についてご紹介します。

転職

理学療法士(作業療法士)のほとんどが離職をしたら、同職のまま職場だけを代える転職をします。求人が多いため、転職では条件(給料、労働時間、学びたいこと、やりたいこと…)をより希望に近づけている人が多いです。

キャリアチェンジ

ごくわずかですがキャリアチェンジをする人もいます。営業、事務、整体師、看護師など、チェンジする職業は多岐にわたります。しかし他職業への就職は理学療法士(作業療法士)としての就職よりはるかに厳しいです。

休職して復職

離職後は一度休職してから復職するという人もいます。これは求人が多く就職しやすい理学療法士(作業療法士)ならではの方法といえるでしょう。

早期の離職を避けるために

理学療法士(作業療法士)の離職は他職業に比べてポジティブな要素が多いですが、就職して早期の離職は避けたいですよね。早期の離職をしないために就職活動前にやっておくと良いことを、経験を踏まえながらお伝えします。

職場見学

エントリーの前には必ず職場見学をしましょう。自分が就職活動でチェックされる前に、まずは本当に働き続けたい職場かどうかをしっかりチェックしてください。

職場見学でチェックすべきポイント

①スタッフの患者さんに対する接し方

スタッフがどのように患者さん接しているのかは、その職場を知る上でとても重要です。笑顔で接しているか、敬語を使っているか、命令口調になっていないか、患者さんを放置して自主トレばかりさせていないかなど、スタッフの対応をチェックしてください。

患者さんに対してすら笑顔を作れないスタッフであれば、スタッフ間ではなおさら笑顔は期待できません。患者さんに対して敬語を使っていない、もしくは命令口調のスタッフがいるようであれば、患者さんを大事にしていない職場と思われます。また患者さんに自主トレを促してばかりの職場は治療知識が不十分なのか、仕事量が過剰なのか、残業手当てが申請しにくい状態なのかが予想されます。

②スタッフの年齢

スタッフの年齢をチェックしてください。離職率が高い職場には30代前後の中堅年齢層がいないことが多いです。

新卒採用の離職者が多い職場では新卒者が中堅くらいの時期に離職となります。そのため職場は新人もしくはその職場を辞めずに働き続けた人(年齢を重ねた人)で構成されるようになり、年齢に偏りが生じます。

あらゆる年齢層が在職している職場の方が働き続けやすく、どの年齢でも勤務しやすい環境の可能性が高いです。

③企業の方針

企業が理学療法士に対して求めているものをチェックしてください。理学療法士に対する期待値が高ければ具体的な方針や、今後の事業展開も教えてくれます。

長く働き続けたいのであれは、企業の考えに共感ができるかどうかは大切なことです。

労働条件や環境を念入りに確認する

労働条件や環境はとても大事です。生活に直接関わることなので、給与、ボーナス、手当て、残業代の支払い、休日などは念入りに確認してください。

先生に相談する

気になる企業があれば、先生にも相談しましょう。養成校周囲にある病院・施設の情報は詳しいはずです。またその職場に同学校卒業の先輩がいれば、紹介をしてくれることもあります。

先輩に相談する

就職に悩んだら先輩にも相談してください。現役で勤務しているので、先輩の勤務先周囲にある病院・施設情報は先生より詳しいことがあります。また他施設に知人がいれば、欲しい情報を貰ってきてくれることもあります。

口コミサイトをチェック

口コミサイトに欲しい企業情報が載っていることがあります。理学療法士(作業療法士)の口コミ情報は少ないですが、チェックはしてみましょう。

自分が職場の風土に合わせる

自分が職場の風土に合わせることも大切です。どの職場でも大なり小なり不満は生じます。不満がでたときは、自分の考え方や捉え方、行動を見直す機会にしてみるのも良いでしょう。

これから理学療法士(作業療法士)を目指す方へ

理学療法士(作業療法士)の離職率は他職業と比べて低いというわけではありません。しかし理学療法士(作業療法士)の場合、離職はネガティブに捉える必要はありません。スキルアップなどポジティブな目的がある場合が多く、また再就職がしやすい職業なので安心して離職することができます。

企業には一度就職をしたら一生涯そこで働き続けるのが良し、という考え方は根強くあります。しかし理学療法士(作業療法士)のように離職という選択肢があり、新しい職場にチャレンジできる職業も大変魅力的ですよ。

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