作業療法士を目指そうかな、と思い始めたけれど、自分は作業療法士に向いているのだろうか?と考えることってありませんか?学校に行って資格を取ってから、自分は向いてなかったと気づくのは悲しいですね。

そうなる前に、現役作業療法士だからわかる、作業療法士に向いている人、向いていない人についてお話ししましょう。

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作業療法士の仕事に求められること

作業療法士の仕事とは

作業療法士は、病院や様々な施設で、ドクターから作業療法の指示が出たクライアント(患者さんや施設利用者など)に対し、作業療法を行います。

作業療法とは、クライアントが、生活をするうえで不満だと思っていること、改善を望んでいることを改善し、生活の質を向上させる手助けをします。作業療法はリハビリといわれることが多いですが、一般的な身体機能の向上だけを目的とするだけではなく、その先の生活上の問題を解消するためにアプローチします。

例えば、脳卒中により右手の動きに制約が出た、というクライアントに対し作業療法士はどんなアプローチを行うでしょうか?

リハビリと聞いて想像されるのは、右手を元通り動かせるように頑張って訓練することというようなイメージですね?

作業療法も、もちろんそのようなアプローチも考えられます。ですが、より快適な生活を送るために、

  1. 右手の運動機能の回復を行うと同時に、
  2. 左手の運動機能も高め、左手で生活上必要な道具を持ち、
  3. 右手はその道具を操作しやすいように、ものを支えることができるようにする、

といった多角的なアプローチを行います。

クライアント個人個人の生活に合わせ、柔軟にアプローチする、というのが作業療法の特徴です。

求められること1 クライアントやその家族など周囲の人と接する

何をおいても作業療法士はまずコミュニケーションが必須です。人と関わることが好きである、ということが求められます。

また、クライアント本人以外に、クライアントの周囲の人と関係を持つ場面が多くあります。クライアントを中心とした周囲の関係性を客観的に把握できる観察力も必要となります。

求められること2 知識(医療や幅広い教養など)

医療的なことや作業療法の専門知識が求められます。これは、作業療法士の資格取得のための学校で、必要最低限が身につきます。さらに、就職した先によって求められる知識をより深めていく必要があります。また、クライアントとのコミュニケーションにおいても、幅広い教養があれば、接点を広げやすく、それが個人の強みにもなります。

求められること3 発想の柔軟性と探求心

クライアントによって、生活上求めるものは様々です。クライアントが何を求め、どうすればクライアントの希望に沿うことができるか、をくみ取る柔軟性が必要です。さらに、個人の状況に合わせ、より最適な方法を探求する力が求められます。

求められること4 体力・体調管理

作業療法士は体を使う仕事です。また、クライアントと接するにあたり、作業療法士が病気になって感染を広げる、という可能性も十分あり得るので、体調管理を徹底する必要があります。

求められること5 粘り強さ

作業療法はすぐに良い結果が出るものではありません。作業療法士もクライアントと一緒に長い目で成果を見極めていくことが求められ、粘り強く続けていかなければなりません。根気のいる仕事です

作業療法士の適性・向いている人

では、作業療法士に向いているのはどんな人でしょう。

人と接することが好き

まずは、人と接することが好きな人は、作業療法士の適性があります。

ここで勘違いしないでほしいのですが、作業療法士だから、人付き合いが好きで好きで仕方ない、得意でないといけない、ということではありません。多少人付き合いに不安があってもいいと思います。正直、私も人見知りがあったり、人付き合いが得意な方ではありません。

ですが、クライアントとの関わりは大切にしたい、クライアントのためにできることをしたい、そういう気持ちがある人であれば、作業療法士は続けていけます。

感謝されることが好き

作業療法士をしていると、クライアントから「ありがとう」という言葉をかけてもらうことがあります。そう言ってもらえると、やってよかった、もっと頑張ろう!という気持ちになります。素直にそう思える人は、作業療法士に向いていると思います。

人に寄り添い共感できる

クライアントが具体的にどのようなことに不満を感じているのか、どんなふうに改善したいのかを共感できる能力の高い人は作業療法士に向いています。

観察力や洞察力や探求心

アプローチした時にどのような変化が起こっているか、細かく観察し、洞察できる能力のある人が作業療法士に向いています。

アプローチをくり返す中で、さらに良い方法は無いか?と考え続けることができる人は作業療法士に向いています。感情に流されず、様々なことを客観的に判断できる人が作業療法士に向いています。

これらができる人は作業療法士として、さらに向上できます。

ただし、これらは、経験を重ねるうちに身に付くことが多いと思います。初めからできないから、と諦めないでください。

責任感

責任感のある人は作業療法士に向いています。クライアントの希望に沿えるように努力することが作業療法士の使命である、と思えれば、作業療法は成功しやすいです。

また、どんな職業であれ、働くうえで、責任感がなければ仕事自体も職場での生活もうまくいきません。

作業療法士になるための採用試験

作業療法士が就職する際の採用試験はどのようなものでしょうか。

作業療法士の適性試験

作業療法士の資格取得のための学校を卒業できる、という時点で作業療法士の適性はある、と判断されている場合がほとんどです。従って、就職の際に適性検査や知能検査などを行う施設はあまりありません。

国家試験の結果が出るのが4月に入ってからなので、新卒の場合、合否判定が出る前に就職先を決めることになります。また、国家試験を受ける前に就職先を決める場合が多いので、就職先が決まってから、受験後の自己採点で、ある程度合否を自己判定する必要があります。

小論文や専門試験

就職希望者が多い施設や大きい病院などの場合、小論文や試験が行われる場合があります。過去に出題されたものを参考にし、学校でもそのための対策をしてくれるところが多いです。

面接

就職の際、ほとんどの施設で面接が行われます。志望動機、どのような作業療法士を目指すか、などははっきり答えられるようにしておかなければなりません。

作業療法士の面接では、志望動機だけでなく、その人がどんな人なのか、を見られているように思います。受け答えの仕方や、姿勢や態度にも注意を払いましょう。

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作業療法士に向いていない人

残念なことに、作業療法士に向いていない人とは、どんな人でしょうか?

人とのコミュニケーションが嫌いな人

作業療法士は人と接する仕事です。人と接することがとにかく嫌い、という人にはできない仕事です。

人付き合いが得意でなくても、人見知りでもいいのです。相手のことを考えることができ、より良い関係を築きたい、という気持ちがあれば、それはきっと伝わると私は思います。しかし、自分さえよければ相手のことなんてどうでもよい、という自己愛が強い人は、クライアントを傷つけてしまう可能性が高いので、作業療法士には向きません。

職場での、多職種も含めたスタッフ間の人間関係も、作業療法を進めるうえで必要不可欠です。スタッフ間での連携や情報交換が円滑に行えない人も、作業療法士には向きません。これはある程度は慣れも必要となります。職場によって連携の取り方が異なることもあり、初めはスムーズにいかないこともあるかもしれませんが、仕事を続けていくうちに慣れてくるものです。

成長意欲・向上心のない人

治療の成果、作業療法士としての知識や技術、勤務態度、様々なことにおいて、成長しようという気持ちがない人も、作業療法士には向きません。

成長しようとする気持ち、つまり向上心はクライアントへの治療にも影響します。作業療法士がクライアントに関わる期間は決まっています。その間に、より効率的にクライアントの生活を改善しようという気持ちが生まれない人は、作業療法士を続けていくことはできません。

これは、コミュニケーションにも言えることで、多少人付き合いに不安がある人は、向上心がなければそれは改善せず、作業療法士の支障が出る可能性があります。しかし、コミュニケーションを意識して作業療法士を続けることで、人付き合いの難しさを克服することも可能だと思います。

専門分野の判断

作業療法士は、様々な分野のクライアントを対象としています。高齢者分野、整形外科分野、精神科分野、小児分野など多くの分野に渡ります。また、訪問リハ、病棟リハなどの作業療法の形態によっても、働き方が大きく変わることがあります。

例えば、精神科分野の施設に就職したものの、精神疾患のあるクライアントに対するアプローチが、どうしてもうまくいきにくい、関係づくりにかなりの労力を要する、ということがあります。だからといって、作業療法士が向いていないわけではありません。別の分野に転勤して、その人の作業療法の良さを発揮できる、ということはよくある話です。私の同期も、別の分野に転勤してうまくいった人がいます。

学校で、いくつかの実習先に行って、自分に合う分野を決定することになりますが、実習先の施設ごとにその施設の方針などもあります。分野の決定が難しい場合、自主的に見学に行く、ボランティアに行くこともおすすめです。

これからの作業療法士に求められること

高齢化がどんどん進む今、高齢者の分野だけでも作業療法士の需要は高まっています。さらに精神科分野においても、小児分野においても、その患者数は増加傾向にあり、他のリハ職より作業療法士が求められる場面も増えていると考えます。

クライアントにとって、悩みや不安を抱えている時に出会う作業療法士に対して求めるものは、単純に心身機能の獲得だけではありません。そんなクライアントの思いをくみ取り、作業療法士との出会いや関わりで人生そのものが豊かになった、と思ってもらえるような作業療法士を目指してほしいと思います。

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