専門学校に通って理学療法士を目指そうと考えている方へ、進学の際に重要となる学校選びのポイントを解説していきます。専門学校には3年制と4年制がありますので、それぞれの特徴やメリットを解説して行きたいと思います。
3年制専門学校の特徴
まずは3年制の専門学校の特徴を見てみましょう。3年制の専門学校は全国に84校あります(平成28年のデータ)。
最短で理学療法士になれる
理学療法士になるためには、養成校に入学するのが唯一のルートです。養成校には大学・短大・専門学校があります。短くて3年、長くて4年の学校生活となります。最短距離で理学療法士になりたい場合は、3年制の専門学校もしくは短大を選びましょう。
学費が一年分少ない
学費が一年分少なくて済むというのは、進学するうえで大きなメリットと言えるでしょう。一年早く働くことができるわけですから、奨学金の利用を考えている方にとっては、返済するうえでその点も大きいですよね。
詰め込み型?
大学であれば4年間かけて学ぶ内容を3年で行うわけですから、4年制の学校と比べて授業が詰め込みになってしまう点は否めません。
「お盆とお正月しか休みがなかった」、「大晦日も学校にいた」、「月曜から土曜まで毎日4限までビッシリ授業だった」など、3年制の養成校卒業者で盛り上がる「あるある」です。
大学生が夏休みを満喫している頃にも学校に通うことになります。また、特に3年次は医療機関での実習から国家試験まで息つく暇もない忙しさになります。
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4年制専門学校の特徴
続いて4年制の専門学校の特徴について見ていきましょう。4年制の専門学校は全国に66校あります。
4年制が現在の主流である
理学療法士の養成校は、近年大学への転換や4年制化が進んでいます。3年間で行うにはちょっと大変なボリュームであることが伺えます。また、養成校が急速に増えたために、一時期理学療法士の質の低下が問題になりました。時間をかけて質の高い学生を育てようという意識もあると考えられます。
国家試験対策
4年制の専門学校であれば、国家試験対策にも時間を充分かけられます。しかし、近年は国家試験の合格率が徐々に下がってきています。急激に資格者数が増えたために、需要と供給のバランスを見極められていると考えられます。
10年ほど前までは「受かって当たり前」という試験でしたが、現在は「4人に1人は受からない」試験となっています。4年制でじっくり勉強ができるからといって、決して安心はしていられません。
臨床実習
臨床実習は、カリキュラム上必要な時間数が確保されなければならないので、3年制でも4年制でも大きな差はありません。しかし、より実習期間を長く設定していたり、見学実習の回数を多く組み込むなど、手厚い実習体制をとっている学校もあります。実習は学生生活の中でも大きなウェイトを占めています。学校選びの上では注目したいポイントです。
3年制と4年制の共通点や違い
3年制の専門学校と4年制の専門学校では、何が共通で、何に違いがあるのかをみていきましょう。
称号
理学療法士の養成校を卒業すると「国家試験の受験資格」が得られる点は、3年制・4年制とも共通です。国家試験に合格し、名簿に登録が完了すると、晴れて理学療法士として仕事ができるようになります。
4年制の専門学校を卒業すると「高度専門士」、3年制では「専門士」の称号が得られます。理学療法士として民間の医療機関に就職する場合には両者の違いはほとんどありません。公立病院に就職する場合には大学卒と同等の扱いとなるため、3年制の専門学校卒よりも優遇されます。
また、高度専門士を取得すると、大学院修士課程への入学資格が得られます。
カリキュラムは同じ?
卒業に必要な単位数が決まっていますので、最低限のカリキュラムは共通となります。学校によっては必要とされる単位以上のカリキュラムを組んで、手厚い授業をアピールポイントとしているところもあります。
留年率や退学率は?
どの学校もオープンにはしていませんが、留年や退学してしまう生徒も一定数います。大きな理由の一つが授業についていけないというケース。初めのうちは覚えることが非常に多く、暗記が苦手だと苦労する人もいます。勉強に自信がなくて時間に余裕があった方がいい人は、4年制の方が向いているかもしれません。
もうひとつの退学・留年理由が、実習がうまくいかなかったケースです。
以前は「実習で単位が取れない=即留年」という仕組みの学校が多かったです。同級生に置いていかれてまで、学校を続けられないという人もいます。筆者の同級生も何人か実習がうまくいかずに学校を去りました。
しかし、現在では仮に実習がうまくいかなかったとしても、救済されるケースが多いようです。その場合の取り扱いについては、学校選びの際に確認したほうがよいでしょう。
国家試験合格を目指すのは同じ
理学療法士の養成校には、「理学療法士国家試験の受験資格を得る」以外の目的はありません。
大学の場合だと、「イメージと違った」と思えば学部を転部することもできます。「大卒」という大きなくくりで、学部と全く関係のない分野で就職することもできるでしょう。
しかし、養成校である専門学校では転部はできませんし、「高卒」として就職することになってしまうかもしれません。
3年制であれ4年制であれ、「理学療法士になりたい」という強い気持ちがないと、後から後悔することになってしまうので、よく考えて進路を選びましょう。
就職や給与待遇
初任給においては、大学卒と専門学校卒に若干の差を設けているところもあります。しかし、それ以外の面ではほとんど差はないといっていいでしょう。資格を持っていることが前提で、あとは経験や技術が重要となる仕事です。
3年制・4年制それぞれのデメリットは?
3年制のデメリット
詰め込み
4年かけてもよいところを3年で行います。ピッチが早いことはやむを得ません。休みは高校性の頃よりも少なくなります。
国家試験対策の不安
臨床実習が3年の夏ごろまで続く場合もあります。そのあとから国家試験対策となるため、十分な時間が確保できない心配があります。
実習の充実度
最低限の実習時間数は厚生労働省の決まりがありますのでどの学校もクリアしています。4年制ではさらに多くの時間をかけているケースもありますが、3年制では時間の制約があって難しいと考えられます。
1年あたりの学費
3年で修了する分、一年あたりの学費は4年制よりも高い場合があります。教科書や参考書代も4年制よりもまとまってかかります。
4年制のデメリット
学費
トータルの学費では、3年制よりもお金がかかります。
働くのが一年遅くなる
社会人の方にとっては重要な問題です。
このように比較してみますと、お金に関わることでは3年制の方が有利と言えます。しかし、言い換えるとお金の問題がクリアできるようであれば、学校生活自体には4年制の方がデメリットは少ないと言えそうです。養成校は卒業できなければ意味がないので、最後まで通い続けられる学校を選びましょう。
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ずばり!4年制の専門学校をおすすめする理由
では、結論として、4年制の専門学校をおすすめする理由について、まとめていきましょう
じっくり学べる(時間が4年間あるため)
理学療法士になるためには、専門的な知識を数多く身につける必要があります。無事に理学療法士になったあとも、ずっと勉強は続いていきます。一生使うことになる基礎知識をじっくりと学ぶためには、時間にゆとりのある4年制の方が良いでしょう。
国家試験対策の充実度
理学療法士の国家試験は年々合格率が下がる傾向にあります。決して誰でも合格出来る試験ではなくなっています。4年制の専門学校であれば、実習後に余裕を持って試験対策に望むことができるでしょう。
技術がしっかり身に付く
理学療法士になるための勉強には、座学だけでなく実技も非常に重要です。これは時間をかけて体で覚えていくしかありません。ここで学んだ技術は、理学療法士になってからもずっと使っていくものとなります。時間をかけてしっかりと身につけたいものです。
実習の充実度
実習期間が長ければ、それだけより多くのことを吸収できます。臨床実習では患者さんを担当させてもらって実際のリハビリを行っていきますが、期間が長ければより多くの患者さんと関わることができるでしょう。様々な疾患の患者さんと関わる機会を持った経験は、理学療法士になってからも大いに役立ちます。
4年制の専門学校に向いている人はこんな人
じっくり学びたい人
忙しい日々も充実感はありますが、じっくりと理解しながら学んで行きたい人にとっては向かないかもしれません。時間に余裕があると、学生のうちから研究論文を書くなんてこともできます。
勉強にあまり自信がない人
授業についていけずに退学してしまう。これが理学療法士を目指した人にとっては最も残念な結果です。理学療法士の仕事に向いているかどうかもわからないまま、夢を諦めるようなことにはなりたくないですよね。勉強が苦手でも、熱意があれば立派な理学療法士になれます。さらに、時間にゆとりがあった方がよりいいことは間違いありません。
現役高校生の人
社会人から理学療法士を目指す人には、早く理学療法士になって働かなくてはならない事情がある人が多いです。ですが高校卒業後に進学した現役生であれば、そこまで時間に製薬があるわけではないかと思います。
理学療法士になるためには、患者さんやリハビリスタッフとのコミュニケーションを身につけることも非常に重要です。その点では社会人経験がある人と比べると弱点になりやすいので、社会性を身につけるための時間は長いほうが良いと言えます。
まとめ:自分に合った理学療法士専門学校を選ぼう
理学療法士の養成校には、3年制と4年制の専門学校(さらに昼間か夜間を選ぶことができる)、4年制大学、短大と選択肢がいくつもあります。
どんな学校を選んでも、「勉強がラクだった」ということはまずありません。一般の大学生では経験しないような苦労もあります。でも、その先には理学療法士として活躍する未来のあなたがいます。
学校選びでは、修業年数や学費、立地などの環境面も非常に重要です。ですが、通い続けるのはあなた自身です。理学療法士になりたいという夢を叶えるために、なんとしても卒業を迎えるまで通い続けられることがなにより大切な条件なのです。自分の目で見て、雰囲気を確かめて、「ここなら」と思える学校を自分自身で選んでください。
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