「理学療法士の将来性は大丈夫なの?」と思われる方は多いです。理学療法士は以前ならマイナーな職業だったのですが、今ではポピュラーとなって数が急増し、需要と供給のバランスに変化が見られます。

ここでは病院・介護福祉施設勤務経験がある理学療法士が、理学療法士の現状を踏まえつつ、理学療法士の将来性について分かり易くご紹介します。ぜひ理学療法士を目指す上でのご参考にしてください!

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理学療法士の現状

理学療法士を取り巻く環境には急激な変化がみられています。まずは理学療法士の現状について把握していきましょう。

資格保有者数

厚生労働省が行った調査によると、平成26年における理学療法士従事者数は104,928人でした。平成17年に行われた同じ調査では理学療法士従事者数は45,080人で、その数は約10年間で2.3倍にも増加しています。

これは理学療法士養成校が急増したこと背景にあり、理学療法士試験合格者数をみても平成17年では4,843人だったのに対して平成29年では12,388人にまで増加しています。合格者数は現時点でも未だに増加傾向がみられるので、理学療法士の資格保有者数は今後ますます増えていくことが予想されます。

求人倍率

平成22年度に行われた調査によると、理学療法士の求人倍率は10.6でした。求人倍率とは仕事を求めている人1人に対して何件の求人があるかを示したもので、理学療法士の場合はこの調査結果を参考にすると1人あたり10件もの求人があるということになります。そのため理学療法士の仕事はとてもニーズが高い仕事だと言うことができ、「働きたいけれど、仕事がない…」という心配はあまりすることがないでしょう。

ちなみに同年に厚生労働省が行った求人倍率の調査によると、同業種であれば医師・歯科医師が10.26、保健師・看護師が4.88、医療技術者が3.53、他業種であれば専門的技術職(機械・電気・土木)が1.05、管理的職業(事務・会計・営業)が1.34、販売業が1.27でした。これらを踏まえると、理学療法士は同業種・他職種と比べてもとても仕事を見つけやすい状況にあるということが分かります。

就職先、活躍しているフィールド

理学療法士が主に就職・活躍しているフィールドは病院・クリニック、介護サービス施設です。H26年に厚生労働省で行われた調査では理学療法士従事者のうち74%が病院・クリニックで、26%が介護サービス施設で従事していました。

また“理学療法士”という名称を使用して働くことができるのは法律による制限から病院・クリニック・介護サービス施設が主となるのですが、理学療法士の資格を活用してトレーナーとして、整体師として活躍する人も少ないですが存在します。

理学療法士の給与、待遇

平成27年に厚生労働省で行われた調査によると、理学療法士の平均年収は約405万円でした。日本人の平均年収は400万円程度と言われているので、理学療法士の給与は一般的な水準と考えられます。ただ理学療法士の勤務先は主に病院や介護サービス施設となるので一般企業より母体が安定しています。そのため世の中が不景気であったとしても給与が大幅に減る、突然に職を失ってしまうという心配はほとんどなく、安心して働き続けることができます。

待遇面では残業が少ないところが多いため、アフター5を充実させることができます。業務終了後に研修や勉強会に行く人、大学院に通う人、趣味の教室に向かう人、保育園に預けていた子どもを迎えに行く人、ショッピングを楽しむ人など、時間の使い方は様々です。休日もきちんと取れるため、プライベートの時間をしっかりと確保することができます。

社会現象と理学療法士の将来性

理学療法士の将来性は社会現象によって左右されます。社会現象から、その将来性を考えていきましょう。

高齢化社会

高齢化社会と理学療法士のニーズは深い関係があります。加齢に伴う病気・ケガに対するリハビリ、そして介護・介護予防でのリハビリには理学療法士の活躍はとても期待がされており、高齢化社会に伴って理学療法士に対するニーズが高まりました。これにより国は理学療法士の数を増やそうと判断し、1990年代には理学療法士養成校の規制緩和を行って理学療法士の数を増加させました。

しかしそのニーズの高まりがこれからも続くとは言い切ることはできないのが現状です。高齢化社会は2040年にピークを迎えるとされ、ピークを迎えてしまうと理学療法士に対する需要と供給のバランスが崩れることが危惧されています。可能性としてですが、理学療法士は今より厳しい環境に立たされてしまうのではないかとも言われています。

診療報酬や社会保障費

理学療法士の給料は診療報酬や社会保障費を基にして支給されています。診療報酬とは病院でリハビリを行ったときに受け取れる金額のことで、社会保障費とは介護分野のリハビリを行ったときに受け取れる金額のことです。そのため診療報酬や社会保障費に変化があれば、理学療法士の給料は自然と変化すると言われています。

現在、診療報酬と社会保障費は2018年に同時改定されることが決まっています。これによってリハビリを実施した時に受け取れる金額が変化します。受け取れる金額が増加する施設もあるかもしれませんが、国がリハビリに対して求める質が高くなっていること、消費税増税が先送りになっていることなどから医療・介護提供者には厳しい改定内容になるのではと考えられています。

AI(人工知能)やロボット

平成27年に野村総合研究所が行った研究では、日本国内の職業のうち49%がAI(人工知能)やロボットの発展によって代替されるという結果がでました。世の中が便利になっていくことが期待される一方で、半分近くの仕事が機械に奪われてしまう問題もあると言えます。

しかしこの研究によるとリハビリ職種の代替確率は低いとされ、理学療法士はAI(人工知能)やロボットの影響を受けづらいと考えられています。

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理学療法士の将来はどうなる?

理学療法士の現状や社会現象を総合的に考えて、理学療法士の将来性について考えます。厳しくなることが予想される分野もあれば、期待が持てる分野もあります。

求人倍率

理学療法士資格保有者の増加していること、これから高齢化社会がピークを迎えていくことを考えると今後の求人倍率は低下することが予想されます。理学療法士養成校や学会などでは「これからは理学療法士としての質を高めていかなければ仕事が厳しくなる」と言われるようになってきています。

将来的にも必要とされ続ける職業なので求人倍率が急激に低下するということはないでしょうが、「就職先を選びたい!」という場合は今より競争化するでしょう。

就職先

理学療法士資格保有者の就職先は徐々に幅を広げています。理学療法士の資格が始まったころであれば就職先と言ったらもっぱら病院でした。しかし徐々に活躍を広げ介護分野、介護予防分野、スポーツ分野、整体分野での就職がみられます。

海外では理学療法士が活躍する分野は幅広く、企業での健康管理を任されたり動物に対して理学療法を行ったりもしています。そのため日本における理学療法士も活躍分野を一層広げられる余地は十分あると考えられます。時間は掛かるかもしれませんが、就職先の選択肢は今後より幅広いものとなっているかもしれません。

給与・待遇

給与・待遇は理学療法士保有資格者数の増加しいていること、高齢化社会がピークを迎えること、2018年に行われる医療・介護保険の同時改定が医療・介護提供者にとって厳しいものになるであろうと予想されていることを考えると、今より良くなるとは考えづらいです。

しかし、だからといって「今後の理学療法士の給与が大きく下がってしまうのでは?」という心配をすることも不要です。理学療法士は給与・待遇に安定感のある職業です。今後も一般的な給与水準を得られるでしょうし、アフター5や休日もしっかりと確保することができるでしょう。

理学療法士が将来も魅力的な理由

理学療法士の将来性では厳しい内容が多かったですが、これからも続いていく魅力がこの仕事にはあります。理学療法士がこれからも理学療法士を続ける理由をご紹介します。

仕事のやりがい

理学療法士の魅力は仕事に対するやりがいです。仕事では辛い痛みを取り除いてあげたり、できないことをできるようになるまでサポートしたり、様々な相談を受けたりします。状況はそれぞれ異なるため、単純にマニュアルに沿って仕事を行うことはなく、考えながら仕事をする楽しみが理学療法にはあります。

また社会貢献ができる仕事なので、直接的に相手の嬉しそうな顔を見ることができたり、感謝の気持ちを伝えてもらえることがあります。やはり相手が喜んでくれていることが、何より日々の仕事に充実感を与えてくれますよ。

仕事と家庭の両立

理学療法士の仕事は日中行うものなので夜勤がなく、残業も少ないため、家庭との両立がしやすい職業です。職業によっては女性の場合、結婚や出産、育児などでライフステージが変化すると仕事を辞めて家庭に専念するというケースがしばしば見られますが、理学療法士の場合はこのような環境変化があっても働き続けている女性が多くいます。また男性もアフター5を有効に活用できるため家族との時間をしっかりと充実させることができます。

自身が成長できる

理学療法士の仕事を続けていると、自分自身に対して成長できたなと感じることが多くあります。患者様や利用者様に対する理学療法の効果を上げることができたり、リハビリに対して幅広いアイディアが持てるようになったりなど、理学療法士としてのスキルを身につけていくことができます。

また仕事では色々な人と接する機会があるので、様々な話を聞くことができます。「漬物はこうすると美味しくなるよ」、「野菜はこのタイミングで植え替えすると良いよ」といった生活の知恵を教えてもらうこともあれば、物事とのの向き合い方や人生哲学を語ってくれたり、また患者様や利用者様の生き方に対して感銘を受けることもあります。理学療法は相手を治療するだけではなくて、相手から様々な学びの機会を得ることができるのも魅力の1つに感じます。

これからの理学療法士に求められること

理学療法士は社会的ニーズが高く、以前であれば理学療法士という資格を持っているだけで価値がありました。しかし今は理学療法士資格保有者数が増加していることから、これからの理学療法士としての質を高めていく必要があると言われています。ある分野での理学療法を極めてみたり、手技を獲得したり、大学院で研究を学んでみたり、コミュニケーション能力を磨いたり、心理学を学んだりなど質の高め方は様々です。

現場ではスキルの高い理学療法士、リスク管理が徹底できる理学療法士、相手の気持ちを汲むことが上手い理学療法士、生活環境を包括的に把握できる理学療法士…色々な理学療法士が存在していて、誰しもが、この人だからこそできる理学療法を持っているように思います。患者様や利用者様に「あなたが担当で良かった」と言ってもらえることがありますが、それぞれが良さをブラッシュアップして、このように思ってもらえる理学療法を追及していくことが今、求められているのではないでしょうか。

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