理学療法士の適性をご紹介します。理学療法士の仕事は特徴があるため、向いている人と不向きな人がいます。そのため理学療法士を目指すにあたり「自分には合っているのかな?」と不安に思う方は多いです。

ここでは実際に勤務経験がある理学療法士が、仕事で求められる能力と照らし合わせながら適性について説明します。

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理学療法士の仕事に求められること

理学療法士の仕事とは

理学療法士の仕事では運動療法や手技、電気治療や温熱治療といった物理療法などを用いて身体の機能を回復させたり、生活の自立を支援したりします。理学療法の具体的な内容(どの方法で筋トレをするか、どういった手技を用いるかなど)は医学知識やあらゆる情報を基にして理学療法士が考えます。

対象となる方はケガや病気を抱えている患者さんや利用者さんで、子ども~高齢者まで、また障がいのある方やない方、介護が必要な方や自立している方など様々な人たちと向き合います。

求められること1 コミュニケーション能力

理学療法は人と関わる仕事なので、コミュニケーション能力はとても重要です。

まず良い理学療法を行うには、患者さんや利用者さん、そしてご家族との信頼関係を築くことがポイントとなります。信頼関係を築くためには相手の話を聞き、理解して、また自分の行っている理学療法について説明をしなければなりません。相手の想いや直面している現実に寄り添い、そして納得してもらいながら理学療法を行うことで、患者さんや利用者さんは満足してスムーズに治療プログラムに取り組んでくれます。

しかし実際は信頼関係を上手く築けずにいるケースも存在します。この場合、患者さんや利用者さんは理学療法に対して消極的で治療効果は低く、「理学療法士のせいで具合が悪くなった」、「担当を変えてくれ」といったクレームが出ることだってあります。

現場では「手技も大事だが、やっぱり口(コミュニケーション)」という声をしばしば耳にします。それだけ理学療法において信頼関係を築くことは治療における最初の一歩と考えられています。

求められること2 知識(医学や医療や幅広い教養など)

理学療法を行う上で知識は欠かせません。人の身体を良くするには、まず人の身体はどうなっているのかを理解する必要があります。解剖学、生理学、運動学といった基礎医学から始まり、理学療法や物理療法、手技といった臨床医学を身につけなければなりません。

また理学療法士は身体を良くすることだけではなく、その人の在宅生活(退院後の生活、施設での暮らし方など)についても考えます。そのため地域にある活動やサービス、福祉用具など幅広い教養が求められます。

求められること3 体力

理学療法は体力をつかう仕事です。知的労働者ではありますが、「白衣の土方」と言われることがあるほどの肉体労働者でもあります。

重介助の人を1日に何人も担当することがあり、介助におけるコツはあるものの、体力は消耗します。また勤務施設内における移動は階段です。エレベーターはありますが患者さんのためにあるものなので基本的にスタッフは利用しません。3階分程度の移動はよくありますし、10階分を階段で上ることだってあります。

「人を治すには、まず自分の身体づくりから」と言う先生もいるほどです。

求められること4 根気

理学療法士の仕事は根気が必要です。

理学療法はいくら頑張っても上手く治療効果がでないこともあれば、治療がスムーズであっても突然患者さんや利用者さんの体調が悪くなり身体が一気に元の状態へと戻ることもよくあります。また認知症の方と向き合う機会も多く、拒否されることもあれば、言っていることを理解してもらえないことも、思わぬ行動と向き合うこともあります。

しかしスムーズに物事が進まないからといって治療を諦めてしまえば、患者さんや利用者さんを良くすることはできません。解決の糸口は多様にあると考えて、1つ1つ丁寧に取り組む姿勢が重要です。

求められること5 人に頼る力

理学療法士は例え国家試験を通過したとしても始めのうちは知識も技術も不十分な状態です。しかしそのような状態であっても患者さんや利用者さんを担当します。「何をすれば良いか」、「本当にこれで良いのか」と悩むことも多いです。

そんなとき重要なのが、人に頼る力です。自分で考えることも重要ですが、それだけでは臨床における待ったなし状態の患者さんや利用者さんに適切な理学療法は行えません。身近な先輩に相談をして、アドバイスをもらうようにしましょう。

また理学療法士の先輩以外にも、作業療法士、看護師、介護士、医師、ケアマネージャーなど様々な専門職から、理学療法士とは違った専門的な視点からのアドバイスをもらうことも非常に重要です。

理学療法士の適性・向いている人

理学療法士には様々なことが求められますが、適性がある・向いている人はどのような人なのでしょうか。一般的に言われている理学療法士の適性を仕事内容や求められることと照らし合わせながらご紹介します。

人と接することが好き

人と接することが好きなことは、理学療法士の仕事をする上でとても重要となります。

理学療法士の仕事は常に誰かと接する仕事です。理学療法中はもちろん、それ以外のときであっても家族から話を聞いたり、先輩理学療法士と相談をしたり、医師や看護師と話をしたり、役場や施設に連絡をしたりすることもあります。

人とのコミュニケーションを楽しめる性格であれば、患者さんや利用者さんとの信頼関係をスムーズに築くことができ、また他職種や他機関との連携をより密に保つことができるでしょう。また何より、人と接する機会が多いこの仕事を、面白いと感じながら取り組むことができます。

感謝されることが好き

感謝されることが好きな人は、理学療法士の仕事に向いています。

理学療法士の仕事では患者さんや利用者さん、そして家族から「ありがとう」と言われる機会が多いです。時には涙を流しながら感謝を口にしてくれる方もいる程です。

このような相手から頂く感謝の気持ちは、理学療法士のモチベーションにつながります。たくさんの勉強が必要だったり、治療がスムーズにいかないことなどで根気が必要となったりする仕事ですが、その分以上に感謝を頂ける仕事なので、感謝されることが好きであればとてもやりがいを感じられるでしょう。

観察力がある

観察力があることは、治療において非常にプラスポイントとなります。

理学療法は身体機能を回復させることができますが、治療の第一段階としてまずはどこが悪いのかを知らなければなりません。そのために理学療法士はその人の動き(寝返り、立ち上がり、歩行など)をよく観察して、治療すべき部位を探し当てていきます。

右足より左足の動きが少し弱い、体幹がやや傾いている、肩の位置が左右で違うなど、非常に些細なことから観察力が始まるため、観察力があることは理学療法をする上でとても役に立つことでしょう。

責任感

理学療法士の仕事において責任感はとても重要です。

理学療法士の仕事は患者さんや利用者さんの人生を大きく左右することがあります。歩けるようになるかならないか、辛い痛みが良くなるかどうか、自宅で生活できるか施設にいかなければならないか…これらは理学療法士の知識や技術、根気によって決まってしまうことがあります。

大きな責任が伴う仕事だということを自覚して、常に真摯に仕事に取り組む姿勢が求められます。

思いやり

相手を思いやる気持ちは理学療法をする上で欠かすことができません。

理学療法の対象となる方はケガや病気を抱えているため、精神的にダメージを受けている場合がほとんどです。そのため相手を気遣いながら話を聞き、声をかけていかなければなりません。

また理学療法は相手のペースを見ながら行うものです。性格やその日の気分、体調、相手の予定などを考えながら、理学療法内容を調整して実施します。

このような思いやりをもって接することで、良好な信頼関係を築くことができ、スムーズな理学療法が行えます。

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理学療法士になるための採用試験

理学療法士として働くためには採用試験を通過しなければなりません。採用試験の内容は主に適正試験、小論文、専門試験、面接です。実際に理学療法士の採用試験で出題された問題とともに見ていきましょう。

理学療法士の適正試験 (知能・学力や性格検査など)

理学療法士の適正試験では知識や学力、性格検査が実施されます。知識や学力検査では国語や数学といった一般教養問題が出題されます。性格検査では「人と接することが好きですか?」といったような性格に関する調査問題が出題されます。

小論文や専門試験

小論文では与えられたテーマについて、自分の考えやその理由を論理的に文章へと展開していきます。与えられるテーマは理学療法士に関係するものからあまり関係のないものまで様々です。「理想の理学療法士像」、「介護福祉制度についてどう思うか」、「最近、気になったニュース」といったものが実際に出題されています。

専門試験では理学療法士国家試験のような問題が出題される場合が多いです。しかし就職先によってはより実践的な問題(治療プログラム内容を作成する問題や、症例の問題点を抽出する問題など)が出題されるところもあります。

面接

面接では直接、面接官と質問のやりとりを行います。「どういった理学療法士になりたいか」、「なぜ当院・当施設を選んだのか」、「長所・短所は何か」といったことが聞かれます。また勤務していたところの上司に聞いた話ですが、面接では印象が大事と言っていました。質問に対して述べている内容はもちろんですが、返事の仕方や目の配り方、話し方も面接では確認されている可能性があります。

理学療法士に向いていない人

理学療法士に適性がある一方で、一般的に向いていないだろうとされる人もいます。仕事選びの注意点として、自分の性格と照らし合わせながら読んでみましょう。

コミュニケーションが苦手な人

コミュニケーションが苦手な人は理学療法士の仕事に強いストレスを感じてしまう可能性があります。

理学療法士の仕事は常に人と接して行われるため、コミュニケーションは取らざるを得ません。また理学療法ではまず患者さんや利用者さんとの信頼関係を築くことが重要ですが、コミュニケーションなしでは関係性を築くことはできません。

コミュニケーションが必須な仕事なので、苦手だと感じて頻回に悩むことになれば、辛い仕事と感じてしまうかもしれません。

成長意欲のない人

成長意欲がない人は、患者さんや利用者さんに対して質の高い理学療法の提供が難しいでしょう。

理学療法は幅広く、そして深い知識が必要です。常に学ぶ姿勢がなければ、適切な理学療法は実施できません。現場の理学療法士はより良い理学療法を提供するために、業務後には残って手技の練習をしたり、家でも論文を読んだり、休日には講習会に出かけたりしています。

患者さんや利用者さんに喜んでもらう理学療法を実施するためには、成長意欲はとても重要です。

深く考え過ぎる人

理学療法をするにあたり深く考えを巡らすことはとても大切なことなのですが、考え過ぎるようになると息詰まりを感じることがあります。

理学療法の仕事では様々な困難と向かい合うことがあります。患者さんの想いがかなわなかったり、上手く治療効果があげられなかったり、正直他の理学療法士であればもっと患者さんを良くできたのではと思うことだってしばしばです。

これらは現場ではよくあることなのですが、そんなときに考え過ぎて「自分は迷惑をかけている、理学療法士に向いていない」と思い至る人がいます。実際に私の周りでもこのような悩みを抱えることで学校を留年したり、仕事を辞めてしまったという人もいます。

しかしどの理学療法士も初めから完璧な人はおらず、困難を通じて学んで成長しています。難しい出来事があっても、あまり考え過ぎず割り切る気持ちも大切と言えるでしょう。

これからの理学療法士に求められること

これからの理学療法士には紹介したもの以外にも、より高い専門性が求められると言われています。

かつての理学療法士は数が少なかったため、「理学療法士」という資格を持っているだけで十分な価値がありました。しかし近年では養成校が増加し、理学療法士の数が急増しています。理学療法士国家試験の合格者数は平成元年では980人でしたが、平成29年では123888人まで増加しています。約30年のうちに合格者数は126倍にもなっています。

今後は資格だけでなく、専門的な知識や技術を身につけて他の理学療法士との差別化をはかることが重要となってくるでしょう。

まとめ

今回、理学療法士の適性についてご紹介いたしました。仕事では「コミュニケーション能力」、「知識」、「体力」、「根気」、「人に頼る力」が重要となります。これらが備わっていれば、理学療法士に向いていると言えるでしょう。

しかしこれら適性がないからといって、理学療法士を諦める必要はありません。これらは仕事を通じて成長させることができ、現場の理学療法士も悩みながら切磋琢磨しています。また適性の有無も個性の1つとして捉えることができ、きっとあなたの良さとして発揮することができるでしょう。

個性を大切にしつつ、仕事で求められることを把握して、必要な対応力として適性を徐々に養っていけるといいですね。

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