作業療法士は本当にやりがいに溢れた魅力的な職業です。作業療法士として私が実際に現場で経験してきたことや感じてきたことを皆様にお伝えしたいと思います。

作業療法士の役割

作業療法士は、”なんでも屋さん”?

皆さんは、作業療法士がどのような現場で、どのような役割を担っているかご存じでしょうか。

作業療法士とは、教科書でいうと、「応用的な生活動作の質的、量的改善を目標に、手工芸や、日常生活動作練習を介して対象者の治療にあたる」というのが作業療法士の職務内容になりますが、よくわからないという声を多く聞きます。実際、作業療法士って何をしているのかについて、よくわかっていない医師や、医療職も多くいるのが現実です。

ズバリ、作業療法士とは、医療現場における“なんでも屋”と思って頂ければと思います。

作業療法士の知識幅

作業療法士は、対象者の方の生活に密接に関わり、その人が、在宅で、その人らしく、気兼ねなく生活できるようにサポートしていくのが仕事です。対象者の方をサポートする時に、より多くの医療的知識や福祉的知識、さらには、生活するにあたっての生活の知恵など、求められる知識量は格段に多いのです。

例えば、服の着替え方がわからない・・・という対象者の方に対しての服の着方の指導や、料理の手順がわからない・・・といった高次脳障害を抱える方に対しての関わり、夜が不安で仕方ない・・・と不眠を訴える精神的に不安定な高校生など、知識量は領域が広い分、多くなるのは頷けるかと思います。

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作業療法士としてのやりがい

患者さんとの密接な関係づくり

先述しましたが、作業療法士の仕事は、対象者の方の生活に密接に関わることです。つまり、中・長期的な関わりになることがほとんどです。

これにあたり、患者様との信頼関係が非常に重要になってきます。最初はうまく関係が作れないことが多いですが、徐々に打ち解け合っていく中で、対医療者としての関わりをしていた対象者の方が、徐々に、対友人のように打ち解けて気さくに何気ない会話をしながら介入できるようになってきます。

「○○さんになら色々聞けるから助かる」「○○さん以外のリハビリは信用ならん」など、一人の人間として信頼してくれているなと実感できる瞬間が多く、これは中・長期的に関わることのできる作業療法士の仕事の魅力ではないでしょうか。

他の職種では得られないやりがい

回復期病院や、地域でのリハビリテーションなど、現場によって求められる作業療法士像は異なりますが、私の体験談として、他の職種では得られないやりがいについて紹介します。

① 医師や、看護師からの信頼を得やすい

私が以前勤めていた現場では、理学療法士だけで、作業療法士がまだいない職場でした。そのため、職場内での作業療法士の役割や、脳梗塞、脳出血後後遺症としての高次脳機能障害についての考察が行き届いていない現場がそこにはありました。

そこで、作業療法士として、高次脳機能障害が生活に与える影響について、他職種にもわかるように、簡単な院内勉強会の主催や、医師とのカンファレンスの場で、積極的に高次脳について説くように心がけていました。

しばらくしてから、徐々に、「作業療法士=高次脳障害を見ながら、生活の問題点を抽出してくれる人」という看板を持つようになり、それからは、事あるごとに作業療法士の私を色々な職種から頼ってくれるようになりました。

高次脳機能障害と生活の結び付けについては、作業療法士が得意としている要素のひとつです。この繋がりについて深く考察することは、すぐに病院の信頼に繋がらなくとも、徐々に他職種には、作業療法士の仕事として認知されるようになります。認知されると、すぐに頼られるようになりますので、頼られるタイミングで非常にやりがいを感じることが出来ます。

② 生活動作分析が出来る

生活のサポートと聞くと、介護福祉士も同じように生活のサポートを行いますが、介護福祉士は、生活に困っている⇒困っていることをサポートするのが仕事です。しかし、作業療法士は、生活に行っている⇒なぜ困っているのか、医療的知識を基に、掘り下げて解釈し、根本的な部分から改善するための関わりを行います。そのため、作業療法士は、生活のサポートの最初から終わりまで関わることが出来る、関わりの長い仕事になります。

働く環境によって異なる仕事とやりがい

地域での作業がいま一番熱い?!

作業療法士は、多種多様な現場で働いています。急性期病院、回復期病院、精神科病院、介護施設など、領域によって求められる仕事量、質は異なってきます。

これから、超高齢化社会を迎える中、需要が非常に期待できる分野として挙げられるのは「地域リハビリテーション領域」です。訪問リハビリテーションや、総合事業にも含まれる一般予防給付事業です。健康寿命の延伸目的で、作業療法士が一般予防給付活動に参加していくは、養成校増設の背景も考えると、参加していかなくては作業療法士の働き口がなくなってしまうので、当然と言えば当然ですが・・・。

この一般予防給付事業における作業療法士の仕事とやりがいについては、まだ未開の部分が多く、この未開の要素こそがやりがいにつながるのではないかと思われます。


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自分自身の成長も感じられる仕事

重要なのは伝えること

作業療法士の仕事は、先述のように、医療現場におけるなんでも屋ですので、新人時代は、求められたことにすぐに応じることが出来ないことがほとんどです。しかし、経験を積むに応じて、徐々に様々な角度からの依頼について対応できるだけの術を身に付けることが出来ます。

特に、脳血管障害の方に対する作業療法では、毎回毎回症状が違い、最初のうちは混乱してばかりで対応できませんが、5年、6年と働いてくると、落ち着いて考察出来て、プログラムもスムーズに立てることが出来るようになってきます。

作業療法士の将来性や安定性

これからの地域リハビリに必要な作業療法

作業療法士の仕事は、今後、病院から地域に切り替わっていくことが予測されます。2040年には、高齢者の数が3900万人に及び、3人に1人が高齢者という現実が待っています。この時代を乗り切るためには、医療介護現場において、作業療法士が密接に関わっていく必要がありますので、これからの需要は20年は安定していると思われます。

作業療法士としてやりがいを感じたこと

OT経験4年目 テレビに取り上げられた

私が回復期病院に勤めていた時の体験です。当時、脳梗塞後遺症で、運動麻痺の出ている患者様に対して、神経筋再教育(動きを出すためのリハビリプログラム)の手技について深く勉強しておりました。その手技を実践していると、患者様が徐々によくなるという幸いな結果を出すことが出来ました。

この患者様も大変喜んで下さいました。無事退院したのち、地元のTV局に、その体験を紹介する機会があったそうです。その際、TV局のほうから取材を受け、地元のTV番組でリハビリ職として感謝される仕事であるということを紹介出来た時は、この仕事をやっていてよかったなと心底思いました。

作業療法士という職業に魅力を感じている方へ

「興味」よりも「安定」という傾向ではいけない

作業療法士という仕事を目指す上で、最近の学生の傾向として、「安定」が挙げられます。確かに、作業療法士という仕事は「安定」はします。共働きで、子供も2人。それなりの生活は可能ですが、それ以上はありません。

つまり、作業療法士としてより充実した人生を送るためには、安定しているから目指すのではなく、本当に作業療法士としての仕事の楽しさを知ったうえで、作業療法士を志すことが大切なのです。

作業療法士の楽しさについては、実習先のバイザーの先生や、養成校の先生などの直接聞くのがいいでしょう。ズバリ聞いてみてください。一人の意見ではなく、色々な人の意見を聞いて、作業療法士の醍醐味について考えてみてはいかがでしょうか。


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