皆さん、作業療法士の仕事って、何かご存じですか?昨今、地域包括ケアシステムが稼働し、作業療法士が輝ける時代が来たように感じますが、では果たして、作業療法士の仕事って具体的に何なの?と思われる方も多いでしょう。

今回は、作業療法士の仕事について紹介していきたいと思います。これから作業療法士を目指そうと奮闘している方必見です。

【目次】

  • 作業療法士の役割
  • 作業療法士の仕事
  • 作業療法士の活躍している場所
  • 作業療法士ならではのやりがい
  • まとめ
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作業療法士の役割

作業療法士は「なんでも屋?」

作業療法士は、ズバリ「なんでも屋」でなくてはなりません。職務内容については後述させて頂きますが、対象となる患者様、利用者様それぞれの「生活」に入り込んでアセスメントを行い、助言や介助を行います。生活というものは、それぞれのパーソナリティや、居住区域などで大きく変化しますので、それぞれによって訴え方が様々です。

私の体験ですが、在宅訪問の際、こんなこともありました。「自転車をこげるようになりたい、でもその前に自転車を直してほしい」「この後孫が遊びに来るから、一緒に遊び道具を選んでほしい」「料理の味付けがいまいち決まらない、教えてほしい」など、まさに個人の生活に入り込んでいる方こそ聞けるデマンドがそこにはありました。こんな個人のデマンドに対応できるだけの対応力が、作業療法士には求められます。

理学療法士との違い

まず一番に挙がるのは「理学療法士」と何が違うの?という質問です。一般目線で見ると、この二つの職種に大きな違いはありませんが、主体になる時期が異なると思ってください。

理学療法のリハビリは、機能回復を主体とするリハビリがメインになります。作業療法は、生活をするためのリハビリが主体になります。そのため、「まずは動ける体を作り、そのあと、着替えたり、トイレに行ったり、人によってはご飯をつくったり、買い物にいったり・・・」と生活をするためのリハビリを行うのが作業療法です。

理学療法士が生活をするためのリハビリをしない訳でもなく、作業療法士が機能回復のリハビリをしない訳でもありませんが、それぞれ得意としている時期があるということだけわかって頂ければいいかと思います。

作業療法士の仕事

主な仕事内容

仕事内容につきましては、先述しましたように「なんでも屋」であるが故に、これが仕事!と定まったものはありませんが、一人の患者様を例に挙げて説明してきたいと思います。

作業療法士が担当する患者様の例

患者氏名:Aさん 50代 男性 脳出血後遺症 会社の経理担当

脳出血後遺症で、リハビリ加療が必要な方です。理学療法、作業療法が処方されました。

この方に、作業療法士は何をするかと言うと・・・

  • イ) 生活背景聴取
  • ロ) ニーズ、デマンドの確認
  • ハ) 能力評価
  • ニ) ハンデキャップのある能力強化
  • ホ) 生活指導
  • ヘ) 入院時の精神的フォロー
  • ト) 家屋訪問、指導
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などが挙げられます。項目立てて紹介すると、簡素なものになってしまいますが、先述したように、個々の生活に合わせた指導、フォローアップを行っていきますので、実に様々な要望を聴取し、それに合わせて柔軟に対応していく必要があります。

作業療法士に求められるスキル

作業療法士に求められるスキルは、①基礎医学的知識 ②対人コミュニケーションスキル ③他職種への理解がある という点です。スキルというよりも、条件というべきでしょうか。前者2つについては、あったほうがよりスムーズに職定着を図ることが出来ます。③につきましては、特に大事な点であるといえるでしょう。

作業療法士というのは、実に様々な知識を持っています。患者様の日常生活のフォローアップをするという点では、看護士とも似ている点があります。また、排泄介助、指導など、介護士の仕事の要素も含んだこともしますし、理学療法のように、運動機能のフォローもします。そういう点では、チーム医療において、作業療法士は他職種の意見をきちんと統合し、患者様に一本化させることのできる唯一の職種ではないかと思います。言わば、「釘」のような存在です。

作業療法士が活躍している場所

急性期病院

昨今では、回復期病院の入院期間が短くなってきている傾向があり、急性期病院入院、その後、回復期病院を介さずに退院されるケースが増加してます。そのため、急性期病院内に「地域包括ケア病床、病棟」というものが設立増加傾向にあります。急性期病院では、全身状態不良の方が多く、離床が進まない方も多いですが、注意深く観察しながら、出来るタイミングで、生活トレーニングを早期から行っていきます。また、地域包括ケア病床、病棟では、在宅復帰にむけて、必要に応じて家屋訪問なども、急性期病院で行っていきます。

回復期病院

作業療法士のほとんどは、この回復期病院及び病床で働いています。その割合は全体の7割とも言われ、作業療法士の活躍の主体は回復期病院とも言われています。

しかし、先述したように、作業療法士の得意としている点は、「患者様の生活を見る」という点です。そのため、回復期病院入院後半~退院に至るまでが、作業療法士の本領発揮出来る期間になります。

介護老人保健施設

介護老人保健施設での作業療法士業務は、病院の仕事に比べると、対利用者様との関わりが多く、病院業務の1.5倍は、利用者様と関わっているといっても過言ではありません。身体機能リハビリ、集団リハビリテーションをはじめ、食事も一緒にとる、といった施設も珍しくなく、生活により一層着目して作業療法を実践することが出来ます。

病院に勤めていると、どうしても他職種との分業に依存してしまい、これは看護師の仕事、これは介護士の仕事と、本来患者様と関われるはずのところを遮ってしまうことがありますが、介護老人保健施設は、その程度が少ないため、対利用者様との密接な関わりを望むのであれば、こういったところで従事するのがよいでしょう。

訪問リハビリ

訪問リハビリテーションにおいては、その規模は年毎に増大しています。地域包括ケアシステムの名のもと始動した総合事業においては、「その人が、その人らしく、地域で支え合いの関係の中、生活していく」という目標を掲げています。そのために必要なのが、地域で支え合いができるシステムの再構築になってきますが、訪問リハビリは、地域に直接関わることが出来ます。

その人の在宅にお邪魔して、直接的な介入が出来る分、やりがいは見出しやすいですが、その分、経験が必要であり、難しい点でもあります。

福祉施設

作業療法士が従事する職場には、発達障害領域もあります。脳性まひ、筋ジズトロフィーなど、先天性疾患児に対してのリハビリテーションを主に行っていきます。この分野については、対利用児よりも、対家族との密接な関わりが必要になります。子供のことについては親は真剣ですので、関わりの中で少しでも不信感があれば、すぐにクレームに繋がります。

その分、経験が必要になってきますので、若手のセラピストは敬遠する傾向にありますが、その領域よりも格段に難しい分、作業療法士として非常にやりがいのある分野になってきます。

作業療法士ならではのやりがい

病院で勤めていて感じることは、患者様のニーズが非常に重要だ、ということです。患者様の多くは「歩きたい」「手を動くようにしてほしい」「しゃべられるようになりたい」など、生活するための具体的なニーズというよりも、目の前の見える問題点の改善を訴えきます。勿論、それらに対して改善するための取り組みは必要です。

話し合いの中で、具体的にそのニーズを細分化し、明確な目標を見つけ、それを達成出来たとき、患者様、利用者様からの「ありがとう」に何度も救われた記憶があります。ありがとうを言ってほしくて作業療法士をしている訳ではありませんが、実際に、「私のやっていたことは間違ってなかったのかな」と思える瞬間でもありますので、安堵すると同時に、嬉しい気持ちも感じることが出来ます。

まとめ:作業療法士は魅力ある仕事です!

これから作業療法士を目指そうとしている方へ提言があります。今、学校で吸収している知識は、ひとつも無駄がありません。学生時代「これって臨床で使うの?」なんて思ったことはありませんか。僕自身も臨床に出てしばらくは「学校の勉強は意味なかったな」と思う点がいくつかありました。しかし、作業療法士として経験を積み、その領域を拡大していくにつれ、学校で習ったことは無駄ではないなと痛感することが非常に多いのが現実です。

学生時代の作業療法士像というのは、学生の浅い経験と、自分の希望が混ざって出来上がったものですので、まだまだ現実が見えていません。そのため、自分が必要ないと思ったことは、将来絶対使わないと決めつけているだけであり、決してそうではないということを肝に銘じてもらいたいと思います。まずは、総合実習、国家試験合格にむけて、目の前のことに一生懸命になってください。その経験は必ず臨床に活きてきます。

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