最近、注目される医療関係の職業である作業療法士。実際どんな仕事をしているのかや、勤務の状況など十分知られていないことも多いと思います。今回はその就職先や仕事内容、勤務の実態などについて、詳しく調べてみたいと思います。

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作業療法士が活躍する分野

作業療法(occupational therapy)は、もともと精神疾患を持つ患者さんに対し、様々な作業(活動)を行うことにより疾患を治療することから始まりました。

現在の日本では、必ずドクターからの指示を受けることで、患者さんに対して作業療法を行うことができます。では、作業療法士は、どのような場面で活躍しているのでしょうか?分野ごとに詳しく説明します。

医療・リハビリテーション分野

精神疾患、身体疾患、両方に対して、各疾患や患者さん個人に応じた作業を分析し、治療として取り組みます。この場合、疾患自体を治療することもあれば、その疾患により制限されている機能や生活を改善するリハビリテーション(以下:リハビリ)を単独、または並行で行うこともあり、医療とリハビリは分けて考えることは難しいと考えられます。

作業療法士が関わる精神疾患として、統合失調症、気分障害(うつ病・そううつ病など)神経症、アルコール依存症などがあります。これらの疾患を持つ患者さんが、病気により日常の生活に支障をきたしている部分にアプローチし、患者さんのよりよい生活を行う手助けをします。

作業療法士が関わる身体疾患は、脳卒中、脊髄損傷、その他身体機能の障害をともなう疾患などです。疾患や身体の損傷により損なわれた運動機能、脳機能に対して、また、それによって日常生活に支障をきたしている部分を改善することで、患者さんの生活をより豊かなものにするようにアプローチします。

これらはどちらも、治療とリハビリが並行で行われることが多いと考えられます。

小児分野

小児分野では、発達障害、脳性まひなどの疾患を持つ小児に対してアプローチします。小児分野は成人の疾患に比べまだまだ研究段階のことも多く、さらに日々成長する小児に対し、個々に応じてより柔軟な対応が求められます。また、小児のため、保護者に対するアプローチも非常に大切になります。

高齢者分野

高齢者分野は認知症や脳卒中後の高齢者の生活にアプローチします。身体面、認知面などだけでなく家族との連携、地域の医療介護との連携も重要になります。

介護分野

介護の分野では、病院での疾患への治療がある程度落ち着いた後、介護施設や自宅にうつり、そこでの生活に重点を置いてアプローチします。生活する環境に応じて、アプローチ方法は無限大なので、作業療法士独自のユニークな発想も生かせる可能性があります。

福祉分野

福祉分野は、介護の分野より、より社会的な支援を行います。行政などの幅広い知識が必要とされます。

それぞれの分野、勤務先によってより深く求められる知識は異なりますが、各分野すべての知識が必要となる場面も多くあります。

また、家族へのアプローチや対応の仕方も、作業療法を行う上で非常に大切になります。患者さん個人だけでなく家族が一緒になって、患者さんも家族も生活を豊かなものにすることが作業療法の目的の一つであると考えられます。

作業療法士の就職先

これまで説明したとおり、作業療法士が担当する分野は非常に広い分野となります。では、作業療法士の就職先はどのような種類があるのでしょう。

病院

病院にも様々な種類があります。脳卒中や脊髄損傷などの疾患の場合、急性期・療養型・維持期、と発症してからの期間によって病棟や病院が変わり、アプローチの内容も変わります。

(急性期)

急性期の病院は、発症後約1か月までの治療に当たります。リハビリの開始は早ければ早いほど良いとされているので、発症後早期から、理学療法士や言語聴覚士など他のリハビリと平行にリハビリを行います。長くても1か月で患者さんが退院され、やればやるだけ回復する可能性が拡がります。他の部署に比べリスク管理が特に慎重とされます。

(療養型)

急性期の患者さんは療養型へ移行します。急性期での治療を終え、回復期の治療、主にリハビリを行います。まだリハビリによる回復は大きく、リハビリの重要度が高いです。また、その後の生活を見据え、生活環境を整えていくことも必要となります。

(大学病院)

公立の大学病院であれば、公務員になります。付属の学校がある場合、実習生が他の病院に比べて多く、実習生の指導業務が多くなります。急性期、療養型ともにあります。

(地域中核)

大学病院と同様、地域の公立の病院であれば公務員になります。療養型の方が多くなります。

(精神科)

精神疾患の患者さんへのアプローチとなります。状態の落ち着いている患者さんが対象となることがほとんどです。病院にデイケアがある場合は、デイケアを担当することもあります。

病院勤務は給料、勤務体制や福利厚生が充実しているところが比較的多いです。出産後も復帰できるように託児所がある病院も多くあります。他職種(ドクター、ナース、ワーカーなど)との連携が求められますが、作業療法士や他のリハビリスタッフの人数が多いので、相談などはしやすいです。病院によっては上下関係や人間関係は難しい場合もあります。残業もある場合があります。

クリニック

個人の開業医の先生が治療にあたるような、入院設備が無いまたは、入院設備が少ない病院です。作業療法士がいるのは整形外科や精神科などになります。

給料などの待遇は悪くないものの、小さなクリニックの場合、リハビリスタッフが少数であることが多く、一人で多くの患者さんを見ることが多いです。そのため休みもとりにくくなります。

介護老人保健施設

介護老人保健施設では、入所者、ショートステイ、デイケアの患者さんに作業療法を行います。それぞれに専任の作業療法士を配置する施設もあれば、兼任する施設もあります。勤務状況は、施設によってかなり差があり、異業種の業務も兼任しなければならない施設や、業務がかなり多く残業時間が長くなる施設もあります。給料も施設によって開きがあるので、就職先を探すときには、現在勤務中の作業療法士に話を聞くなど、十分に情報を収集する方がよいでしょう。

介護施設(老人ホームなど)/福祉施設

介護付き有料老人ホーム、グループホーム、特別養護老人ホームなど、老人保健施設以外にも高齢者の施設は多くの種類がありますが、作業療法士の配置が義務付けられている施設は、いまのところ前章の老人保健施設のみとなっています。

福祉施設として、老人福祉施設、児童福祉施設、障害者グループホームなど、福祉施設にも様々な施設や事業所があります。

施設によっては独自性やサービス向上のために作業療法士を配置している施設もあります。この場合は、給料や勤務形態もその施設にごとに異なります。

訪問リハビリ

訪問リハビリは、作業療法士が利用者の自宅を訪問し、リハビリや適切なアプローチを行います。訪問リハを行っている病院、または個人の事業所に就職し、そこから派遣される形態となります。勤務時間などは比較的融通が利き、パートで働く人も多いです。個別で、実際に自宅での生活に即したアプローチができるのが魅力です。

ただし、施設内で他のスタッフの目が届く働き方とは異なるため、そこでのトラブルが起こることもあります。必ず複数人で訪問するなど、リスク管理の制度がさらに整うことが求められています。

学校の教員

作業療法士の就職先として、養成校での教員、という選択があります。これは、実際の作業療法の現場で数年以上勤務しなければ、採用されることはほとんどありません。卒業校からの教員の依頼や、勤務施設で紹介されることがあります。学校で常勤で働く場合もありますが、普段は施設で作業療法士として働き、週に数単位、講義に行くこともあります。

その他

地域によっては、養護学校での勤務をすることもあります。公立の学校の場合は、公務員、または準公務員となります。

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就職には強くて働きやすい作業療法士

これまでお話ししてきたように、作業療法士の資格を持つことで、就職の幅は非常に広いことがわかります。就職後の状況はどうなのでしょうか?

就職率

まず、就職率ですが、作業療法士としての求人は今のところ十分にあり、ほぼ100%です。養成学校からの卒業後、よっぽど厳しい条件を出していない限り、就職できないということはありません。

転職

スキルアップのため、他部門への挑戦、給料や勤務時間などの条件が合わないなどにより転職を考えた際、他の業種と同様に転職はかなり難しいのでしょうか?

新卒、経験者による差はなく、転職先も他の職種に比べると、かなり多くあります。求人の条件もそれほど厳しいところはなく、年齢、性別などの制限がほとんどありません。

勤務先の安定

医療関係においても、福祉関係においても、リハビリに対する需要は高いです。高齢者、発達障害、精神障害のリハビリを必要とする人数は依然多く、これからも安定した需要が見込まれます。そのため、作業療法士が勤務する勤務先も、経営状態などで不安を抱える施設は少ないと考えられ、今後も安定して働くことができると考えられます。

ワークライフバランス

作業療法士は、実際に患者さんと接し、患者さんの生活を豊かにするための職業なので、職業自体もやりがいがあります。勤務先によっては業務内容が厳しすぎるなど、働きにくい職場もある可能性はあります。ただし、転職ができない職業ではないので、どうしても自分の生活に合わない職場であれば転職も考慮に入ることができます。自分自身の生活も充実させつつ、仕事も充実させる、というバランスが取れる職業です。

また、現場で患者さんや利用者さんと向き合いながら、自身の研究にも力を入れて学会に発表するなど、努力次第でどんどんキャリアアップを目指せる職業であることも魅力の一つです。

まとめ

作業療法士は、現代においてとてもニーズの高い職業です。患者さん一人一人に対して、患者さんの生活を豊かにする、という結果を出すことができれば、アプローチの方法にルールはありません。そこが難しい、とも言われますが、そこが楽しい、という作業療法士が圧倒的に多いのです。

さらに、就職することにそれほど労力を必要とせず、自分に合った働き方をすることができる就職先を見つけることができます。私の周りの作業療法士もかなり多くの人が、スキルアップや仕事の質の向上のために転職をしています。作業療法士は、ずっと安心して働くことができる職業だと言えるでしょう。

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