現役の理学療法士が理学療法士になるために必要な学歴や採用条件などの基本情報を分かりやすくご紹介いたします。

理学療法士になるためには?

理学療法士になるには国家資格が必要

理学療法士は、事故や病気の後遺症によって身体に障がいがある患者さんに対して、主に基本的動作能力の回復を目指してリハビリテーションを行う医療系の国家資格です。作業療法士・言語聴覚士と並ぶリハビリテーションの専門職です。


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理学療法士になるには、国家試験に合格し、国家資格を取得する必要があります。この国家試験は誰でも受けられるわけではありません。受験資格は「理学療法士の養成校を卒業または卒業見込み」とされていますので、必ず理学療法学科のある大学または専門学校を卒業する必要があります。

理学療法士になるために必要な学歴は?

理学療法士になるためには、必ず養成校に進学する必要があります。養成校の入学資格は「高校卒業」であることです。そのため、理学療法士になるために必要な学歴は、「高校卒業後に理学療法士養成校である大学または専門学校を卒業」ということになります。

理学療法士への最短距離は?

理学療法士になれる確率が高い方法

理学療法士には国家試験に合格しなければなれません。国家試験の合格率は例年80~90%程度で推移しています。この結果から見ると、決して難関試験ではありません。しかし、合格率は学校によってかなり差があります。全体の合格率が80%でも、学生全員が受かる学校もあれば、半分しか受からない学校もあります。学校自体の「レベル」がある世界なのです。学校選びの基準においては絶対に欠かせないポイントです。

また合格率が高い学校なら絶対安心というわけではありません。学校全体の国家試験合格率を下げないために、卒業試験を設けて国家試験の合格が危ぶまれる生徒を卒業させないようにしている場合もあります。この点についても事前に確認しておく必要があります。「入学者のうち、留年せずに卒業する人の割合」を尋ねるとよいでしょう。

合格率が高く、なおかつ留年する割合が低いほど、国家試験合格までしっかりと面倒を見てくれる学校であると言えます。

実は大学よりも専門学校のほうが良い?

国家資格を取得するという点では、大学と専門学校の間に大きな差はありません。むしろ、国家試験の合格率だけを見た場合には、大学よりも高い実績を誇る専門学校も多くあります。ですから、学費や通学距離などの条件面や、国家試験の合格率を総合的に考えて学校を選ぶのが良いでしょう。

また、専門学校には3年制と4年制の2種類があります。そのため、高校卒業後、3年制の養成校に進学して理学療法士になるのが最も所要期間の短いコースとなり、22歳になる年に理学療法士になることができます。

3年制リハビリ専門学校の欠点は?

理論上は3年制リハビリ専門学校コースが最短で理学療法士になれるルートとなりますが、実は気をつけなくてはならない点があります。それは卒業までに必要な単位数は3年制でも4年制の学校でも変わりはありませんので、3年制の学校に通う場合はかなりハードな学生生活となるということです。残念ながら、普通の大学生のような長い夏休みは期待できません。

さらに言えば、4年制に通う学生よりも1年短い期間で詰め込んで学ぶことになりますので、優秀でついていける学生と、そうでない学生(脱落する学生)にはっきり分かれる可能性がある、ということですから、この点は、3年制の欠点=進路先として決める際は気をつけておきたい点 ではないかと個人的には感じます。

理学療法士になるための試験内容

国家試験の時期

理学療法士国家試験は、例年2月下旬から3月上旬まで、全国8会場にて行われます。

応募に必要な書類

受験申込みには、受験願書や写真などが必要です。現役での受験の際はまだ在学中に申し込むことになるため、手順などは学校できちんと指示してくれます。

試験内容(筆記試験)

試験内容は、解剖学・生理学など一般的な医療知識を問う一般問題が1問1点で計160問。よりリハビリテーションの実際に即した実地問題が1問3点で40問の計120点。両方を足して合計280点満点から、6割となる168点を獲得し、なおかつ実地問題で120点中43点以上取れれば合格となります。試験実施後に不適切問題があるなどして点数は若干変動します。

●理学療法士 国家試験の難易度とおすすめの勉強法(参考)

理学療法士国家試験の難易度とおすすめの勉強法について、現役の理学療法士が経験を元にアドバイスをしてくれています。詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

理学療法士 国家試験の難易度とおすすめの勉強法

理学療法士になるための倍率・難易度は?

倍率、難易度

理学療法士の国家試験は、受験資格で養成校を卒業または卒業見込みであることが求められるため、受験者には一定の学力水準があります。そのため合格率は決して低くなく、90%を超えていることも珍しくありませんでした。しかし、近年理学療法士の養成校が乱立して受験者数が急増しています。需要と共有のバランスが崩れる懸念から、年々試験の難易度が上がっている傾向があります。平成28年の試験では合格率が74.1%となり、4人に1人は合格できない水準となっています。

理学療法士に採用されるための条件は?

理学療法士の養成校を卒業し、国家試験を受け国家資格を取得すること以外に、理学療法士として採用されやすい条件などはあるのでしょうか?私の経験談を交えてご紹介してみたいと思います。

年齢

新卒を逃すと不利になる、ということはありません。社会人から理学療法士になる人も少なくないので、年齢については一般的な仕事ほどハンデにはなりにくいです。

学歴(称号・学位など)

理学療法士は国家資格であるため、資格を保持していれば学歴(どんな学校を卒業したか)を問われることは少ないと言えます。

理学療法士以外の資格

新卒であれば、理学療法士以外の資格はさほど重要ではありません。関連のある資格としては、介護職員初任者研修や福祉住環境コーディネーターなど、学生のうちでも取れる資格はありますが、あくまでも学校の授業と国家試験合格が最優先ですから、無理する必要は全くありません。

経験を積んでから転職することを考えた時には、理学療法士としての上級資格である「認定理学療法士」や「専門理学療法士」を目指しておくのがいいでしょう。実務経験5年以上で「ケアマネジャー」の資格試験を受けることもできます。

実習経験

どんな実習先であったか(急性期病院・回復期病院、老健などの種類)によって就職への有利不利があるケースは少ないと思われます。実習先は必ずしも自分の希望通りの病院に行けるわけではありませんので、それほど気にする必要はありません。ただし、実習先にそのまま就職するケースが多いため、現地での実習経験者は採用試験においては有利です。

理学療法士に向いている人

理学療法士に向いている人物像としていくつか挙げてみましょう。

「誰かの役に立ちたい人」

リハビリを一緒に行うことで患者さんを元気にするのが理学療法士の仕事です。人の役に立つ仕事をしたい人には文句なくおすすめです。

「研究してなにか新しい発見をしたい人」

医学は急速に進歩していますが、ヒトの体にはまだわからないことがたくさんあります。理学療法士の分野でもそれは同じです。研究を重ねて学会発表を熱心におこなっている理学療法士も多くいます。新たな学説を発見し、それが世界中の理学療法士のスタンダードになる、なんてことも夢ではありません。

「人と話をするのが好きな人」

理学療法士の仕事は、患者さんと一対一で行う仕事です。時には励ましたり、慰めたりも必要です。また他の職種やご家族とのやりとりも日常的にあります。そのため、コミュニケーション力が高いほうが仕事はしやすいでしょう。

その他 体力・運動経験

肉体労働に近い仕事ですので、体力があるに越したことはありません。また体育会系の雰囲気もありますので、運動部の部活動経験が生きる場合もあります。

理学療法士として就職できる勤務先

病院

最も一般的な就職先となります。病院は急性期・回復期・維持期と役割が分かれており、リハビリテーションについても同様です。特に集中してリハビリを行う期間である「回復期病院」には理学療法士をはじめリハビリ職の人数が多く、入院中はリハビリ中心となります。

診療所(クリニック)

整形外科のクリニックには多くのリハビリ職が働いています。外来の患者さんに対してリハビリを行います。低周波治療器など「物理療法」と呼ばれる治療機器を多く用います。

介護老人保健施設

介護保険でリハビリを行う施設です。入所と通所のどちらでもリハビリテーションを行います。

訪問看護センター

患者さんの自宅に訪問して行うリハビリテーションを「訪問看護」として提供できるため、訪問看護ステーションで働く理学療法士もいます。

その他

理学療法士は近年人数が急速に増えてきています。それに伴って働く場所も広がりつつあります。特別養護老人ホームや、デイサービス、ショートステイなど介護保険のサービスでも理学療法士を配置しているところが増えてきています。その場合は「機能訓練指導員」という名称で仕事をすることになります。今現在、これらの施設で理学療法士などのリハビリ専門職が働いていることは義務にはなっていません。しかし、今後は配置が義務づけられる可能性が高いと考えられます。

理学療法士は「医師の指示の元」という条件があるために、開業権が認められていません。そのため、理学療法士として独立することはできません。理学療法士に近い職業で、将来開業したい場合は、柔道整復師であれば可能となります。

理学療法士の雇用形態や条件・待遇

勤務先によって異なる雇用形態や条件

理学療法士は国家資格であり、正職員での勤務を見つけやすい仕事です。勤務形態としては基本的には日勤で、早番・遅番制を採用している場合もあります。回復期の病院などでは365日休みなくリハビリを行うところも多く、休みはシフト制となります。公立病院では休みはカレンダー通りというのが一般的です。


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病院によっては正社員ではなく契約社員から始まるところもあります。病院の規模によって待遇には違いが生じます。

アルバイト、パートで働く理学療法士もいる

理学療法士が収入となる診療報酬を得る仕組みは、病院であれば20分間を1単位として、何単位リハビリを行ったかで計算されます。そのため、短時間でアルバイトやパートとしての求人も多くあります。時間の自由がききやすい訪問リハビリなどの働き方もあります。

理学療法士になるために、強い気持ちとモチベーションを持とう

なぜなりたいのか、という目標を明確にしよう

理学療法士になるための学生生活は、決して簡単なものではありません。文系の大学などとは比べ物にならない忙しさです。特に病院などで行われる実習期間中は、レポート作成に追われて寝る暇がないこともあります。実習先の先生も、学生を一人前の理学療法士として世に送り出す責任を負っていますから、ときに厳しい指導を受けることもあるでしょう。

中途半端な気持ちで入学してしまうと、最後まで続かずに退学してしまうことにもなりかねません。理学療法士についての知識をしっかりと得て、自分が本当に理学療法士になりたいのか、理学療法士になったら何をしたいかまで、目標をしっかりと決めておきましょう。

国家試験対策やモチベーションが下がったときは・・・

無事に実習を突破してから、国家試験に取り組むこととなります。国家試験の対策としてひとつだけアドバイスするとすれば、「まずは過去問をじっくりと解く!」です。理学療法士の国家試験問題は法律など後から変更される内容について問われることが少ないため、過去問の正解が正解でなくなるというケースはほとんどありません。ジャンルごとの傾向も掴むことができますし、似たような問題が繰り返し出題されることもあります。まずは過去5年分を5回解く、から始めましょう。ただ解ければいいというわけではなく、全ての選択肢について一つ一つ解説ができるようにします。余裕があれば5年よりもさらに前の問題までさかのぼっていきましょう。

学生生活にはつらいこともありますが、その分「戦友」とも言うべき同級生との絆はかけがえのないものとなります。実技の練習で誰かの家に合宿したり、みんなで励まし合って受験勉強を乗り切ったり。勉強は大変ですが、充実した時間となることは間違いありません。理学療法士になってからも、論文や学会発表などで同級生の活躍を目にするととても励まされます。


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理学療法士になってリハビリを行うようになると、患者さんが日に日に元気になっていく場面のお手伝いができます。本人だけでなく家族からも感謝されるとてもやりがいのある仕事です。実習のレポートや試験勉強が辛くなった時には、専門職として活躍する日を想像して乗り切りましょう。

さいごに

理学療法士は、文字通り自分の手を使って、患者さんの身体がすこしでも良い方向に向かうお手伝いをする仕事です。患者さんだけでなく家族からも感謝されるやりがいのある仕事です。一般的な病院勤務だけではなく、予防医学の分野でも活躍のフィールドが広がりつつあります。ぜひあなたも理学療法士を目指してみませんか?