実際に、理学療法士の大学に通った経験を持つ現役の理学療法士が、大学を選ぶことのメリットやデメリットなどを体験談を交えてご紹介します。

理学療法士になるためには大学進学が必須?

理学療法士になるためには大学進学が必須というわけではありません。

厚労省や地方自治体が認めた理学療法士養成校に通い、国家試験に合格をすれば理学療法士になることができます。

大学以外にもある選択肢

理学療法士養成校は大学以外にも短期大学と専門学校があります。

短期大学は3年制で、学校によっては1年間追加で勉強をして大学卒業と同じ学位を取得できるというところもあります。専門学校には3年制および4年制があります。

理学療法士の大学と専門学校における違い・特徴

①学費

一般的に大学は専門学校に比べて学費が高いです。3年制の専門学校であれば1年早く卒業ができるため学費ならびに生活費も抑えることができます。

②学習内容

大学では教養や研究分野を、専門学校では実習を通じた実技をしっかりと学ぶことができます。

③学位

大学を卒業すると学士の学位が、専門学校を卒業すると専門士の学位が与えられます。

理学療法士大学の数

全国に理学療法士の大学はいくつある?

2017年時点で国に理学療法士の大学は102校存在します。うち国立が14校、公立が10校、私立が78校です。

理学療法士大学に通うメリット

メリット1 教養・研究を学べる

大学では教養や基礎医学、研究をしっかりと学ぶことができます。教養は学校によって様々ですが言語や文化、芸術など幅広い知識を学べます。理学療法以外の知識とも触れることで、物事に対する考え方に深みを増すチャンスを得ることができます。


スポンサードリンク






また大学は研究設備が整っている場合が多く、解剖学や生理学といった基礎研究、投球動作や歩行といった人の動きを調べる動作解析など、自分の興味に合わせた研究を行うことができます。研究を通じて論理的な思考を養うことができ、得た知識を就職した先の臨床調査や研究、症例報告、学会や論文発表などにいかすことができます。

メリット2 大学院への進学を視野に入れやすい

大学では研究の面白さや重要性を学ぶことができ、また大学院生が身近に存在するため大学院への進学を考える機会が増えます。

大学院では研究の方法論、論文の書き方、発表の方法をより深く学ぶことができます。大学院で研究したことは国内にとどまらず、海外で発表をする人もいます。

メリット3 就職後の待遇が良い

就職先によっては大学卒業者は専門学校卒業者より初任給が高い場合や昇給が良い場合があります。

メリット4 学費が安い(国公立の場合)

国公立の場合、専門学校より学費は大いに抑えることができます。国公立の入学金+4年間の授業料は約250万円ですが、専門学校は350~700万円です。

理学療法士大学に通うデメリット

デメリット1 学費が高い(私立の場合)

私立大学の学費は専門学校より高くなります。入学金+4年間の授業料で約550~800万円となります。

デメリット2 受験時の倍率が高い(国立の場合)

国立大学の偏差値は専門学校より高く、また受験時の倍率は高い傾向があります。入試に向けて十分な勉強が必要と言えるでしょう。

デメリット3 入学後の勉強が大変

大学入学後の勉強は大変と言えます。高校のように手取り足取り指導をしてくれる教員がいる学校もありますが、勉強は“自ら調べて学ぶもの”という指導をする学校も少なくありません。そのため自由度は高いのですが自ら学ぼうという意識を持たなければ勉強に追いつくことができない状態になることもあります。

デメリット4 国家試験の勉強には集中できない

国家試験対策に重きを置いている大学もあるのですが、学校によっては国家試験対策は自己責任として全く対策をしていない学校もあります。特に国立大学など受験倍率が高いところではこのような傾向がみられます。

4回生後期に卒業研究・就職活動・国家試験を全て同時にこなさなければならないこともあり、このような場合国家試験の勉強だけに集中することは難しいでしょう。

理学療法士以外の国家資格は?

理学療法士以外の、例えば作業療法士、言語聴覚士、看護師、柔道整復師、介護福祉士といった国家資格も大学や短大、専門学校へ進学して、試験を合格することで取得することができます。

実際に理学療法士の大学に通って感じたこと(体験談)

大学を選んだ理由

大学(国立)を選んだ理由は学費を最小限に抑えたかったこと、また大学の方が将来性があるのではないかと考えたからです。

学費に関しては親からは国立でなければ進学させてあげられないと言われており、夢のために頑張って勉強をして受験し無事進学をすることができました。将来性に関してはやはりイメージとして学歴はあるに越したことはないと考え、国立の専門学校ではなく国立の大学を目指しました。

良かったこと

大学に入学して良かったことは多くあります。

まず学費です。国立に入学することができたため学費は抑えることができ、さらに申請によって経済的事情が考慮されて授業料は入学~卒業まで半額免除を受けることができました。

また幅広い人脈も形成することができました。入学した大学には様々な学部が併設されていたため教育・経済・電気・建築など自分とは違う方向を目指す人々と知り合うことができ、友人となれたことは今でも大きな財産だと感じています。

学業においては、やはり研究をしっかりと学べたことは自分にとってとてもプラスであったと感じています。就職をしてからも講演や発表をする機会が度々あり、研究を通じて得た論理的思考は実践的にいかすことができたと思います。

よくなかったこと

大学に入学してよくなかったことは卒業時における実践力が乏しいという点です。

学校にもよりますが大学では生理学・解剖学・病理学・運動学など基礎医学をしっかりと学び、それをベースとして論理を組み立てて治療法を考えるという学び方をします。私の通っていた大学では“技術は就職してから自分で努力をして学んで、基礎と思考力を身に着けよう”という指導を受けてきました。


スポンサードリンク






基礎がしっかりと学べるため様々な症例に対して治療法の応用が利かせやすいのですが、卒業したてのころは経験が非常に乏しく応用力を身に着けるまでには時間と努力が必要となります。

また理学療法士になるための国家試験の勉強も非常に大変でした。これも大学によりますが、私の通っていた大学は国家試験の勉強に関しても試験対策は自分で頑張れというスタンスでした。更にこの時期には卒業研究と就職活動が重なっていたため色々な焦燥感と疲労が蓄積され、非常に大変だったことを覚えています。

大学の勉強は教員が「これを勉強しよう」ということはなく自ら学べというスタンスだったため自由度は高かったのですが、その一方で自己管理をしていかなければならない側面があるように感じます。

大学進学に向いている人

研究がしてみたい人

大学は設備が整っているところが多く、教員自身も研究を率先して行っている場合も多いため的確な指導を受けることができます。

教員になりたい人

大学に進学することで幅広く深い知識を身に着けることができ、大学院まで卒業すれば教員採用もされやすくなる傾向があります。

出世したい人

出世したい人就職先によっては学歴を出世の要素に加味しているところもあります。

理学療法士の大学でかかる学費や諸経費

国公立

  • 入学金 282,000円
  • 1年間の授業料 535,800円
  • 教科書代 約20~50万円
  • 実習費 約7万円~

私立

  • 入学金 約20~30万円
  • 1年間の授業料 約100~150万円
  • 教科書代 約20~50万円
  • 実習費 約0~80万円

 

国公立、私立大学の主な学費は上の通りです。

教科書代や実習費は負担が大きい割に明記されていないこともあるので入学前に問い合わせておくと安心です。これら以外にも学校によっては施設費、図書費など様々な費用がかかるところもあります。

また大学に通う4年間は生活費も必要となります。大学生の平均的な1ヶ月の住居費は約53,000円、食費は約25,000円という調査もあり、4年間であれば大きな出費となります。このような費用も事前に考えておくと良いでしょう。

まとめ:理学療法士の大学か専門学校で迷っている方へ

理学療法士の場合は大学であれ専門学校であれ卒業をして国家試験に合格をすれば同じ理学療法士になることができます。


スポンサードリンク






しかし学校によって学費、修了年限、そして学べる内容も異なります。学費を抑えたければ頑張って勉強をして国公立大学や国立専門学校を目指すと良いです。また早く卒業したい・即戦力として働きたい場合は専門学校、研究をしてみたい・基礎知識を身に着け論理的思考を養いたいならば大学が良いでしょう。

自分にとっての理想の理学療法士をイメージしながら、自分に合った学校を探し求めてみてください。