リハビリの先生として人気のある作業療法士。その作業療法士になるには、どれぐらいの学費がかかるのでしょうか?
国家資格である作業療法士の資格を取得するには、作業療法士の国家試験の受験資格を得ることができる学校へ行く必要があります。その学校には、作業療法士の養成課程がある大学、専門学校があり、そこで3年以上学び、所定の課程を修了することが必須となります。
では、作業療法士の国家試験受験資格を取得するための学費は、いくらぐらいかかるのでしょうか?また、行く学校によって学費に差はあるのでしょうか?さらに、学費以外に必要なお金はあるのでしょうか?
実際に作業療法士の資格を持つ私の体験もふまえて、調べてみたいと思います。
作業療法士の学費はどのぐらい?
まずは、作業療法士の学校の入学から卒業までにかかる学費の相場と、1年間の学費だけでいくらぐらいかかるのかをざっくりと発表しましょう。
全国の学費相場(入学から卒業まで)
- 238万円~660万円
校種・在籍年数ごとの学費の平均額
1年目(入学金含む) | 2年目以降 | 卒業まで | |
専門学校(3年制) | 128~190 | 100~135 | 330~460 |
専門学校(4年制) | 130~190 | 120~150 | 430~620 |
夜間専門学校(3年制) | 130~155 | 120 | 360 |
夜間専門学校(4年制) | 117 | 100 | 417 |
公立大学 | 82 | 52 | 238 |
私立大学(3年制) | 120~189 | 100~155 | 400~480 |
私立大学(4年制) | 137~200 | 100~158 | 550~660 |
(単位:万円)
学校ごとの公開情報によると大まかな学費はこのような金額でした。
学校によって、教材費、実習費、入学金などが含まれている場合とそうでない場合があり、ややばらつきがあるので卒業するまでの学費の相場も開きが見られます。
学費が高い学校と安い学校の違いは?
前の章で見た学費は、大きな差があることがわかりました。この差は何の違いからくるものなのでしょうか?
学費が高い学校の特徴
学費が高い学校の特徴は、私立大の学費がやや割高なところが多いということです。作業療法士は医療系の勉強も多く、それらの設備や講師の先生にかかる費用が多いのではないかと考えられます。
また、立地にも関係がある、という印象を受けました。交通の便が良い都市部の学校はやや学費が高くなっているところが多いです。さらに私立大学の場合、海外研修が必須になっているとこともありますので、授業料とは別途に高額の研修費がかかる場合があります。
また、4年制の専門学校は数としては少ないのですが、3年制の専門学校に比べ、時間をかけてじっくり授業を行うためやや学費が高い傾向です。
学費が安い学校の特徴
学費が安い学校の特徴は、国公立の大学の学費です。国公立は4年制のみですが、私立大学、専門学校より圧倒的に安くなっています。
成績が優秀であれば国公立を目指す、というのは作業療法士の世界でも同じなのですね。専門学校の場合、地方の学校は学費が他より少し安いところもあります。
学校の運営を医療法人が行っている学校の場合、学費は安くても、運営元の医療法人への就職がすすめられ、就職先の選択肢が少ないこともあります。
作業療法士の学費の内訳
ここまで、おおまかに学校に収める学費についてみてきましたが、この学費の内訳にはこれらの費用が含まれていることが多いです。
授業料
学費の内訳で主なものは授業料となります。
入学金
入学金に学費(授業料)が含まれている学校、入学金とは別に授業料を納める学校、様々あります。
教科書代
作業療法の授業は科目が非常に多く、科目ごとに教科書(図が多くカラフルで分厚いものが多い)にかかる費用がかなり高くなります。医療関係の本は、正直なところ、高価です。勉強を重ねるうちに、教科書以外にも自分で学びたい気持ちが強くなり、新たに本を購入することもありますが、その際にもけっこうお金がかかります。
実習費
実習で特別講師の授業があったり、校外への実習がある場合など、実習費が必要な学校があります。
施設利用費
学校が設備を新設するなどした場合、施設利用費が必要なことがあります。
その他
授業・実習で必ずレポートの提出が必要となります。レポートはパソコンで作成し、プリンターで印刷して提出するので、パソコンとプリンターも必要になります。
学校を選ぶ際には学費の内容も十分調べる必要があります。
学費以外にかかる費用(生活費など)
学費以外に学校に通うために必要な経費の内訳も見てみましょう。
家賃(学生寮などの寮費・下宿代など)
実家を離れて一人暮らしをしたり、寮や下宿で生活する場合、家賃や部屋代が多くかかります。作業療法士の学校はどんどん増えているとはいえ、地方にはまだ少ないこともあり、それまでの学生生活と同じように自宅から通うことが難しいという学生は多いです。
生活費
特に一人暮らしをする場合、生活費が学費と同等かそれ以上にかかることがあります。課題も多く、毎日びっちり授業が詰まっていることが多いので、生活費がかかることは十分考える必要があります。
交通費
交通費がかかる場合も3年~4年通うことを計算に入れておく必要があります。
学費の負担を抑えるためにできること
学校へ通うための費用は高額になりますが、そのために作業療法士になることを諦めるのは残念な話です。学費を抑えるためにできることはないのか、についてみてみましょう。
奨学金制度を利用する
大学にも専門学校にも、奨学金を利用できる制度があります。奨学金を利用するにはいくつかの条件をクリアする必要があります。その条件がクリアできれば卒業後、国家試験に合格して作業療法士として就職し、数年間働くことで奨学金を返済することができるので、学費を一度に払えない場合は利用しましょう。
社会人資格取得者の優待制度
学校によっては、社会人になってからの入学の場合、医療・リハビリ関係の国家資格、民間・団体の資格を持っている、医療施設に勤務経験がある、医療関係以外の資格・検定などを持っているなど、学校で指定された審査項目を満たすことで優遇が実施されている学校があります。
夜間部に入学する
夜間部がある学校の中には、昼間部より夜間部の方が学費が安かったり、夜間部に学費の優遇措置がある学校があります。夜間に学校に通い、昼間は働くことで学費の負担を抑えることが可能です。
アルバイトをする
休日などにアルバイトをして学費の足しにする、という学生もいます。(ですが、個人的には、レポートや実習に追われる生活となるのであまりおすすめしません。)
優秀学生賞の優遇を目指す
入試の成績が良かった学生、2年生以降の学生で前年度の成績が良かった学生に対し、学費が減額される学校もあります。
説明会に参加後、入学
入学前、学校の説明会に参加していた学生に対し、学費を減額する学校もあります。専門学校に多いですが、このような優遇がある学校もあるので、事前に調べて減額できる分は可能な限り減額できるとありがたいですね。
学費と学校選び
学校を選ぶ際、学費というのは非常に気にかかる部分です。ですが、単純に学費の高い・安いだけで判断していいものでしょうか?
私の考える、学校選びのポイントとは。
1年あたり/卒業までの合計を含めた学費で考える
作業療法士の学校は、1年だけ通うわけではないので、卒業までの長いスパンで見て、見通しを立てて通えるかを判断することが必要です。
私の通っていた専門学校(3年制)は、2年生の夏休みに、オランダへの海外研修がありました。海外研修となると、それだけで数十万円かかります。卒業までに、そのような授業料以外の経費が必要なのか、確認するのも大切なことです。
生活費まで含めたトータルで考える
実家から通うのか、一人暮らしを始めるのか、によっても必要なお金の額は大きく変わってきます。一人暮らしをするのであれば、地域によって生活費は差があるものです。同じ生活圏で学生の生活費がどれくらいかかるのかも、今は簡単に調べることができます。事前に集められる情報は1つでも多く集めておきましょう。
学校の雰囲気、通学や生活環境も重要。学費の安さだけで学校を選ばない
学費の安さは重要なポイントではありますが、3~4年、その学校で学び卒業することが目的です。学校や先生方の雰囲気、通学環境、生活環境もふまえて無理のない学校選びをしましょう。
就職してからは生活が安定する
作業療法士のお給料は、実は、他の医療福祉関連の職業に比べると高めです。学費はかかりますが将来安定した収入を得るための投資だと考え、無理のある学校選びはせず、しっかり資格を取って卒業することを見据えて選んでください。
作業療法士の資格を取れば、卒業後の進路には困らないので、奨学金の返済も無理なく終えることができる人がほとんどです。
まとめ
作業療法士の学校は、学費に関しては、決して安くはありません。けれども、学費以外のことも総合的に判断して学校を選んでほしいと思っています。
私が学生だった頃に比べて、作業療法士の学校は、かなり数が増えました。比較できる学校が増えたのは、迷う要素も増えることになると思いますが、選択肢が多くなるのはありがたいことだと思います。学校も、学費・国家試験合格率・勉強や実習のサポート、それ以外にも他の学校に負けないように、と様々な工夫がされていると思います。ぜひ、受験する前に学校を訪れて、自分の目で見て、直接話を聞いてほしいと思います。私もオープンキャンパスに参加し、雰囲気を知った上での入学だったので、安心して通い始めることができました。
恥ずかしい話、私は実習での単位が足りず、1年留年しました。40人のクラスで12人も留年者が出ました。作業療法士の資格を取るのは、簡単なことではないし、先生方もそれだけ本気で教えてくださっています。ですが、苦労して資格を取り、作業療法士として働いてみて、やっぱりすごく魅力的でやりがいのある仕事だと思えます。作業療法士になりたい!と思った人は、可能の限り、負担を減らす方法を考えて、学生の間一生懸命勉強して、ぜひ夢を実現してほしいと思います。