作業療法士を目指そうか、と思い「作業療法士」でネット検索してみたところ、ネガティブな意見をたくさん見つけてしまった、という経験はありませんか?
私は、作業療法士(現在、育児に伴う離職中)ですが、ネットの書き込み欄などで作業療法士の不満などがやたら書き込まれているページを見つけてしまい、ビックリしたことがあります。現実は、そんなに厳しいのでしょうか?作業療法士の不満だけではないリアルな声をお伝えしたいと思います。
現役作業療法士が感じている不満ポイント
1.仕事内容への不満
作業療法士の仕事内容は、実は、一言ではまとめられないとても広い範囲のアプローチが必要となることがあります。実際、よく言われるのが、「作業療法士は関わる範囲が広すぎて、具体的に何をやったらよいのかわからなくなる」ということです。わからなくなって、考えすぎてしまう、というのがよくあるパターンです。
2.職場環境・人間関係への不満
医療関係の職場は、各職のなわばりを過剰に意識することがあります。作業療法士は、作業療法士どうしはもちろんのこと、ドクター、ナース、介護スタッフ、ケアワーカーさん、その他、様々なスタッフとの連携が非常に重要になります。しかし、その連携がうまく取れない職場がある、という話を聞くことがあります。
3.精神・体力面の不満
作業療法士は、クライアントの身体機能面にも精神機能面にもアプローチする職業です。体力、精神力、ともに求められます。そのどちらか、または両方に負担がかかってくる可能性は十分に考えられます。
4.給与、待遇面の不満
作業療法士の給与、待遇面に関しては、医療関係の国家資格を持った専門職であり、基本的には悪くないです。ただし、勤務先によってばらつきがあるのは事実です。
5.作業療法士としての将来性への不安
作業療法士は、現在の高齢化社会において、ますます需要がある職業であると考えられます。年間7000人から8000人が作業療法士の資格を取得しているため、飽和状態になるのではないか、と考える人もいますし、今後、就職先が安定してあるのか、と不安になっている人もいます。
それでも作業療法士を続ける理由
作業療法士の様々な不満をご紹介しましたが、私は、これらの不満はそれぞれ解消可能であると考えています。上記の不満それぞれの解消方法についてお話ししたいと思います。
1.仕事内容への不満
確かに、作業療法士のアプローチの幅は、理学療法士の、身体面への限定的なアプローチに比べると広いと言われます。ただ、どこからアプローチしていけばいのかわからない、というのは、見方を変えると、どこからアプローチしてもよいということです。
クライアントの生活上の問題に対し、身体面、精神面、環境面、そのどこからでも細かく段階を設定して、作業療法士もクライアントも両方が改善を実感しながら進めることが可能です。
クライアントやその周辺の人が良い変化を感じやすい、これが作業療法士のメリットであると私は考えます。
2.職場環境・人間関係への不満
職場環境や人間関係は、働くうえで、非常に重要だと思います。人間関係の連携がとりにくい、環境が悪いということは作業療法士に限らず、どこの職場でも起こり得ることであり、作業療法士が特に難しい、ということはないです。
多職種との連携に関しても、同じことが言えると思います。どうしても環境や人間関係にストレスが多すぎて仕事ができず、改善が見込めない場合は、勤務先を変えることを強くおすすめします。
というのも、現時点で正社員の求人も多くあるので、勤務先を変更する事は難しい事ではありません。無理して続けて体調を悪くしてしまっては元も子もありません。
新たな勤務先を探す場合、自分が現勤務先で不満であった部分が解消できそうか、事前に施設見学に行く、現場のスタッフに質問するなど確認を取るようにしましょう。
3.精神・体力面の不満
作業療法士はクライアントの体を触ることも多く、体力が必要になります。日頃から体調管理に気を付けましょう。無理をして体を傷めることの無いようにし、必要であれば定期的なメンテナンス(マッサージなど)をするように心がけましょう。
病気やけがなどを負ったクライアントと関わることには精神力も必要となります。精神的に負担がかかる場合には、ストレスを発散させる方法を自分なりに見つけて実践すること、また、一人で抱え込まずに話せる相手を見つけるなど環境を整えることが必要となります。これも、他のどんな職業でも同じであり、作業療法士に限ったことではないと考えられます。
4.給与・待遇の不満
給与や待遇については、就職する際に、事前に情報を集めることができます。就職先を決める時点でわからないことは質問して納得してから決めるようにしましょう。就職前に聞いた内容と明らかに異なる、などの場合は職場に相談するようにしましょう。改善されない場合は、他の勤務先を探すことも選択肢に入れてよいと思います。
5.将来への不安
高齢化社会は進んでいて、需要が増える以上に作業療法士の数が増えるのではないか、という不安はあるとは思いますが、作業療法士の活躍できる場所は、高齢者を対象とした場所だけではありません。小児領域(身体障害・発達障害)や精神科領域でもこれからも需要は増えると考えられます。
また、病院や施設の回転数を上げるなどの目的から、訪問リハの必要性も上がってきています。作業療法士はまだまだ活躍の場を広げることができる職業であると考えられます。
さまざまな不満や不安はありますが、それ以上に作業療法士として働くことで、自分にとってもクライアントにとってもメリットがある、と思うことができるので、私は作業療法士を続けようと思っています。
不満が解消しなければ転職も考えよう
不満の解消方法はある、というお話をしましたが、これはあくまで私の個人的な意見です。
作業療法士は、クライアントのために生活の質の向上を手助けする職業ですが、それができない時には転職も考えるべきであると思います。
具体的には、
- クライアントとの関係に支障が出るような問題が頻繁に起こる
- クライアントの生活の向上をともに喜ぶことができない
- 他にやりたいことが見つかった など
作業療法士は、クライアントの生活の本質に関わります。クライアントへのアプローチを本気で行うことができない何らかの理由がある場合には、作業療法士を続けていくことはできないと思います。
マイナスなイメージに惑わされないで
ネット検索で、様々なネガティブな意見を目にすることもあるかもしれませんが、それが全てではない、ということは覚えておいてほしいと思います。
作業療法士は、確かに簡単になれる職業ではないと思います。クライアントに会った瞬間から、そのクライアントの生活をどんな風によくしてあげる可能性があるだろう、そう思える感性が必要とされる職業だと思います。
また、資格を取るための勉強や実習も努力が必要です。さらに、働き始めてからも、医療的な知識をはじめ、日々勉強することが求められます。ただし、それが、クライアントのためであり、そこにやりがいを感じ、自分を成長させることもできると思える人であればだれでも、良い作業療法士になれると思います。
あとがき
私は、作業療法士になったことで、自分の人間としての色んな幅が拡がったように感じています。クライアントの生活を一緒に考え、小さな変化が大きな変化になっていくのを見ることができました。これは、クライアントの生活の質の向上を目的とする作業療法士でなければ実感することができなかったと思います。
人間、生きている限り不満はあって当然ですが、さまざまな不満を解消する、それこそが作業療法士の目的です。働くうえでの自分の不満ともうまく付き合いながら、自分にとっても、クライアントにとっても必要な職業、そんな風に思える作業療法士を目指してもらえたらな、と思います。